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今
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「れいちゃーん、朝ごはん出来てるから食べてねー!じゃあね〜」
義母の凛花さんの高い声がいつものように二階の俺の部屋にドア越しにも響いてくる。
時計は8時を少し超えたところを指している。
凛花さんは家に帰ってきた日はいつもこれくらいの時間に出て自身が起業した会社に出勤する。
父は単身赴任中らしい。休日には帰ってくる。
俺は二人の顔をここ何日か見ていない。それが普通だ。
「…起こされたところで」
学校までは徒歩20分程度だが、もう8時を超えてるということはもう遅刻確定だ。
凛花さんが俺のことを把握していないのはいつものことだから今更気にしない。
俺もこの歳だ。家族なんてそんなものだろう。結局他人なのだ。俺の家が特殊だからだとは思わない。
とりあえず顔を洗おうと思ってドアを開けると
「あ…」
創矢も丁度部屋から出てきたらしく、鉢合わせた。
「…寝坊か」
なんの感情も無いような目で一瞬俺を見てそういうと創矢はブレザーを羽織りながら一人で階段を降りて行った。
一言発しただけでもいい方だ。
創矢は昔と随分変わった。
創矢と俺が出会ったころは本当の兄弟以上に仲良くやっていたし、いつだって一緒に遊んでいた。
俺と3歳差だからあいつが中学に上がる時は小学校で逢えなくなるのが寂しくて、大泣きしたことを覚えている。
今思うとお互いかなりのブラコンだった。
そんな創矢とは急に距離ができていった。最初は学校で逢えない分素っ気なく感じるだけだろう、創矢はもう中学生だから大人っぽくなったんだろう、なんて思っていた。でもそれは確信に変わり、俺と関わることを避けているのが顕著になっていた。
俺だってバカじゃ無いからつきまとうなんてことはしなかったし、あえて理由を聞こうとはしなかったが、それは俺の意地でもある。
悪いことをしていたなら謝るがそんな覚えはないし、勝手に無視してくるのなら俺だって無視すればいいだけの話だ。くだらない意地だというのはわかっている。でも創矢から言い出してくれるのを期待していたのだ。
玄関のドアが閉まった音がした。
高校は9時から始業らしい。
「俺も学校…行くか」
空は俺の意に反して晴れ渡っていた。
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