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畏怖
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「…なにしたんだよ」
俺の腕にしがみついて怯える創矢を庇うように後ろに隠しつつ父に問いかける。
正直俺もこの何もわからない状況と、生気を失ったかのように無表情で立っている父親に恐怖を抱いていた。
創矢が少し震えている。
薄暗がりに浮かぶ父の姿は幽霊にも見える。
随分久しぶりに父の姿を見たが元々痩せ型なのにまた痩せたように見える。
それが余計不気味に見えるのかもしれない。
「何をしただと?なんだその口の聞き方は。創矢が言うことを聞かなかったから叱っただけだ。少し成長したくらいで親に向かって反抗するなんて。大人の言うことは素直に聞くべきだぞ。お前もだ礼」
そう言ってこちらに向かってくる父との距離が縮まるにつれて創矢がきつく俺の腕を掴んでくる。
顔も俺の背中に埋めている。
まるで父から逃げるように、身を守るように。
「じゃあな、創矢。部屋を片付けろよ、礼」
ゾクッとした。
俺たちの目の前に来た父は薄い笑みを浮かべて創矢の名前を呼んだのだ。
そのまま階段を降りて、玄関から出て行く音がするまで俺と創矢は身動きが取れなかった。
父が出ていってからしばらくして正気に戻った俺は隣、ほぼ後ろにいる創矢に目をやった。
「おい、創矢。あいつ出てったぞ。何されたか知らねえけど、もういねえから。な」
そう言って創矢の手を腕から離そうとしたが
「…い、なさい、ごめんなさいごめんなさいもうしませんゆるして、おねがいゆるして」
目が俺を写していない。
ここまでおかしくなるなんて、こうなるともう只事ではない。
「…どうしちゃったんだよ!おい!創矢!俺だ!礼だよ」
必死に顔を覗き込んで揺さぶってみた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、パパ、もうしません、僕いい子にするから」
「え…なんで」
なんで幼児言葉なんだ。
それにパパって…親父のことか。
何もわからない。
「いい加減目を覚ませっ」
このままではラチがあかないと思って創矢の頬を叩いた。
「…ッ!…れ、い?」
やっとこっちをみた。
「創矢!大丈夫か?」
とりあえず外傷は見受けられない。
「?!」
一つ見つけてしまった。
あの時より濃い鎖骨の上のキスマーク。
「…一度話そう」
創矢から怯えは消えたものの、俺を不安そうな顔で見上げてから小さく頷いた。
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