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東京から転校生が来るという知らせがきたのは、梅雨の終わり頃だった。
あとは夏休みを待つだけといった雰囲気の中、教室は更に沸き立っている。「転校生は男か女か」、それだけがクラスの話題の大半を占めていた。
「女だといいな」
「……どうでもいい」
隣の席のゴマスリ野郎が、勇気を振り絞って話しかけてくる。毎日毎日、そんな無理して親しくなろうとしなくていいのに。
……それに今日は、イジメをする気分でもない。
机の上で背中を丸め、眠いふりをして目を瞑った。痛む腹を庇いながら。
……昨日は、久しぶりに気絶しちまって、中の精液を掻き出すのを忘れた。おかげで腹下すし、後でトイレで処理しとかねぇと……。
「おい、静かにしろ。席につけ」
朝のHR開始のチャイムが鳴り、担任の声がクラスの奴らを一喝する。しかし、騒めきは全く静まらなかった。
なぜだろうと、仕方なく体を起こして前を向く。
すると、すでに転校生らしき生徒が担任の隣に立っているようだった。
「もう知ってると思うが、東京から来た転校生が、うちのクラスに入ることになった。……花崎くん、何か一言」
花崎、と呼ばれた男子生徒は、東京人らしい洗練された笑顔で頭を下げる。
「花崎荘司です。前の学校では花って呼ばれてましたが、なんて呼んでくれても構いません。よろしくお願いします」
その瞬間、わっと拍手と歓声が起こる。田舎というほどではないが、うちの学校に転校生が来るのは珍しかったからだろう。
それに、すらっとして背の高い美しい容姿。胡散臭い爽やかな笑みも相まって、女子の興奮は止まらない。
その黄色い声が、頭に響いてうるさくて、また机に突っ伏してしまった。
東京人か……。
なんか、漫画から出てきたみてぇな奴。どうせなら女が良かった。
「よろしくね」
「っ……は、」
トン、と突然肩を叩かれて振り向くと、例の転校生がなぜか俺の後ろの席にいた。
気づけば、クラスの奴らが、緊張した面持ちでこちらの様子を伺っている。
……ああ、そうか。机を一つ足したら、必然的に俺の後ろの席になっちまうのか。
「………あぁ」
こいつも、話しかけてこなくなるんだろうな。
そう思って適当に相槌を返すと、花崎はまた胡散臭い笑みを浮かべた。
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