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「ここが君の部屋。部屋の番号が自分の名前だから覚えやすいよね」
一番に案内された部屋は、ベッドにクローゼット、本棚に少し本が置いてあるだけの質素な部屋だった。
一番が本棚に寄って、本を一冊取り出した。
「この本、知らないな。ねぇ、ちょっと借りていってもいい?」
いいですよ、と言うと、一番が嬉しそうに頬を緩めた。
「ありがとう、ここでの暮らしは退屈すぎて自分の部屋にある本は全部読んじゃったんだ。今までこの部屋には誰も入れなかったから、ここに本がある事も知らなかったよ」
一番の言葉に少し寒気がした。番号に当てがった部屋を用意する下りなど、自分が記憶を無くして此処にいるのは、やはり誰かの故意的な行動である事だと改めて思った。
得体の知れぬ不気味さに、僕は黙り込んでしまった。
しばらく部屋に一番の声だけが響いたが、やがて彼は話を止めた。
「あ、そろそろ行かなきゃ。あんまり僕ら二人でいるのを“あいつ”に知られたら良くないんだ。六番はもう寝る?寝ないなら一緒にさっきの大部屋に戻って話そうよ」
三番の居る大部屋へ戻ることに躊躇を感じる。失礼かも知れないと思いながらも、僕は一番の誘いを断った。
「あの、この部屋で話しませんか。さっきから、何か緊張しちゃって」
僕は一番の言う“あいつ”は、二人で部屋に居る僕らへ下衆な勘繰りをしていそうな三番の事かと思っていた。しかし、一番が焦ったように口を開いた。
「詳しくは今度話すけど、二人で居るのは本当に危険なんだ。一人でいる事も、寝る時以外はやめた方がいいよ。六番は疲れてるみたいだし、また明日の朝に、さっき行った大部屋で会おう」
一番はそう言って、さっさと部屋を出てしまった。
目覚めてから記憶を無くし、ずっとそばに居てくれた一番が居なくなった事に、少し心細さを感じた。他に人が居るのは億劫だが、明日の朝は大部屋へ行ってみようと思った。最も、時計が見当たらないこの部屋に、朝の概念があるのかも分からないが。
ベッドに近付き、早々に布団を被った。目を閉じ、その日はすぐに眠りについた。
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