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目が覚めた。時計が無い為、時間の感覚がわからないがどれくらい眠っていたのだろうか。
することも無いので、昨日一番が話していた大部屋に向かおうと、部屋の扉を開いた。
「・・・」
「あっ」
扉を開いた矢先に、向かいの部屋から出てきた男は、昨日一番にヒステリックに怒声を上げていた男、四番だった。
「貴様、何処へ行く」
「大部屋に行こうかと・・・」
「フン、着いてこい」
四番が歩き出した、まさか四番が案内をしてくれるのだろうか。歩幅の大きい歩きに遅れないよう、急いで後に続いた。
「六番、貴様の部屋には何が支給された」
「支給?」
「部屋の中にある家具や、その中に入っている日用品の事だ。番号付きの部屋には、それぞれ入っているものが違う。三番の部屋にはピアノがあるぞ」
「…僕の部屋には面白そうな物は無かったです。小さい本棚があったくらいで」
「つまらない奴だったのだろうな。以前の貴様は」
失礼な事を言われた気もするが、それよりも四番の言葉に気になる点があった。
「部屋から、何か分かるんですか?無くした記憶に関する事とか」
「…ピアノなんて弾けそうに無い三番が、ショパンだのアルカンだの上手いこと弾いてた。部屋の中にある物は記憶を無くす前に、何らかの形で自分達に関わっていた物なのだろう」
四番の言葉から、抱えていた不穏な疑問に確信を持った。やはり、此処に僕等を集めた人物は、記憶を無くす前の自分達を知っている。
自分が何者かも分からない今の状態は、胸の奥に何かが詰まっているようで酷く不快だ。今は少しでも情報を集めて、記憶への手掛かりが欲しい。
四番と廊下を歩き続け、目的の大部屋に辿り着いた。部屋へ入ろうとした矢先、向こう側から扉が開かれた。
「六番、会いたかったよ。今ちょうど、部屋まで迎えに行こうとしていたんだ」
一番が飛びつかんばかりに、身を乗り出して僕の元へ来た。その様子を見ていた、四番が眉をしかめて一番を睨む。
「気色の悪い奴め。五番は部屋の中に居るのか?」
「ああ、髪切ってもらうの?居るよ、五番」
一番がそう言うと、四番は質問に答えた一番に返事すること無く、大部屋の中へと入っていった。
「髪って、五番の人が切ってるんですか」
「そうだよ、四番だけじゃなくて、俺や三番の髪も五番が切ってる。あ、そうだ」
一番が大部屋の中に向かって声を投げた。
「五番、六番の髪も切ってくれよ。今のままじゃ前髪も目にかかってるし、長過ぎる」
一番の唐突な申し出に、僕は肝が冷えた。初めて会った五番の印象は、荒々しく、近寄り難かった。急に殴りかかってきたりはしないだろうが、一番の申し出に罵倒が飛ぶのではないのかと緊張した。
しかし、予想とは裏腹に、五番は気にした様子も見せず、淡々と四番の髪を切りながらこう答えた。
「こいつが終わったらな」
安心した様な、拍子抜けした様な気分だったが、前髪が邪魔だったので、五番が切ってくれることになったのは助かった。
ありがとうございます、五番に小さく礼を言う。五番は応えることなく、作業を続けた。
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