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「六番、起きて」
扉の向こうから聞こえる一番の呼び掛けで目を覚ました。なんだか焦ったような一番の様子をおかしく思い、急いで扉を開いた。
何があったのかと尋ねると、一番は答えることなく僕の手を引いた。
「口で説明するより、見た方が早いかもしれない。一緒に行こう」
そう言われて、廊下を歩く。いつもより早い足どりで進んだせいか、目当ての部屋にはすぐついた。
「“A”・・・?」
その部屋にはアルファベットの英字がふられていた。こんな部屋、昨日は無かったはずだ。一番と共に、しばらく部屋を見ていたが、廊下の向こう側から聞こえた声で意識が逸れた。
「なんだ、二人も来たわけ?六番の時は一番に先越されたから、今度は俺が最初に入っていいだろ?」
「三番、これは番号部屋じゃ無いんだぞ。英字の部屋なんて初めてだし、何が起きるかも分からない」
「うるさいねぇ、一番。じゃあここで準備体操でもして待ってろってか?中にいるのがなんであれ、目覚めりゃ部屋から出てくるわけだから、扉の前で何してようが変わんねえよ」
三番は一番の言うことなど気にも止めず、部屋に近付いた。錠は付いていないようで、三番がドアノブに手をかけると容易に扉は開いた。
「・・・、何かいるな」
三番が部屋の中に入っていく。
扉の向こうに耳を傾けると、何かを動かしているような、小さな物音が中から聞こえていた。焦れた一番が後ろに続こうとした時、部屋の中から三番の声が聞こえた。
「おい、何か無いか」
再び扉の前まで戻ってきた三番は、先程までの呑気な表情はなく、どこか焦ったような様子だった。
「何か居たのか」と一番が三番に聞くと、三番は小さく「あいつだ」と呟いた。
「前に、俺達を襲ってきた奴だ。眠ってるみたいだから、今のうちに、」
なにやら物騒だが、話についていけず、ただ二人のやり取りを聞いていた。一番が「六番は大部屋で待ってて」というので、不安に思いながらも言われた通りにその場から去った。
その夜、大部屋に戻ってきた一番に、新しい部屋に立ち入ることは禁じられた。気にならなくはなかったが、一番に強く言われてしまっては、受け入れるしかなかった。
あの部屋には何がいたのだろうか。
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