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第3章
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スマホから黒いオーラを感じる。
『何があった。』
「なん、でもないって…っ言ってるだろ!」
声が上擦る。
息継ぎをしながら、七瀬は背中を丸めて屈み込む。
ーーーまずい。もう電話を切った方がいい。
徐々に低くなっていく御船の声に怯えながら、
七瀬は捲し立てるように叫んだ。
…なにやってんだ、おれは。
こんなんじゃ誰だって不審に思う。
平常心もクソもない。今は電話なんて出るべきじゃなかった。
「用が、ない、なら、切るぞ!気、安くおれに…っ」
『どこにいる。』
七瀬の声を遮って御船が唸る。
「…っ、え?」
『どこにいるのかって聞いてんだ。
答えろ、家か?』
「ぃ、家…。」
『わかった。少し待ってろ。』
ツーツー、と電話が切れた音が、する。
七瀬はスマホを離し、間違いなく通話が終了している事を確認して狼狽えた。
ーーー何だ、いまの…。
まさか…、
来るんじゃないだろうな、あの男。
「…っ」
いや、それはない、と首を振りながら、七瀬はよろつく足で立とうとした。しかし、やはり力が入らず、膝を折る。
ーーー御船はおれの部屋の番号なんか知らないはずだ。
「…っは、ぁ、ハァ、」
スクールバッグと買い物袋を引き寄せて、壁に寄りかかり再び、体重をかけて身体を持ち上げる。
ガクガク震える足を見て、七瀬は思わず拳をぶつけた。
ーーーいい加減、元に戻れ。馬鹿。
……随分、久しぶりだったのだ。
あの業田と直接顔を合わせたのは。
業田の言う通り、顔を合わせなきゃならないような機会は極力作らなかったし、本家にも随分帰っていない。
だから、少し驚いただけだ。
こんなことは何でもない。こんなの、小さい頃から慣れっこだったではないか。
いや、むしろ、
幼い頃の方がーーー…。
「…っっ!!」
途端、喉に熱いものがせり上がり、たまらず、その場に崩折れる。七瀬は慌てて口を押さえ、背中を丸めた。
「ゲホっ、ゲホ、ゲホ…!」
まずい、まずい…!
頭の中に、ぼやけた記憶が蘇る。
封じていた記憶から、あの人の声が聞こえる。
『智美…、智美。ああ、かわいい私の智美…。』
「ゲホっ…、あ、ぁ、やめ、…ぅくっ…。」
大きな手が、体を這い回る。男の影が、七瀬を覆う。
七瀬は涙を流して、身をよじる。
さわさわと、いやらしい手つきで、
七瀬を囲う。
「あ、あ、ハァ、…ゃめっ、…も、……許し…」
『ともみ…!』
ーーーやめて、もうゆるして…。
後から後から涙が頰を伝う。
そして、吐き気が限界に来た時、玄関のドアが勢いよく開いた。
「ーーー七瀬!」
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