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第4章 side 御船
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「ええええええ!」
長倉は学校の自販機の前で奇声をあげた。
同時に中からガコンとジュースが落ちる。
長倉は固まったまま、そばの壁にもたれる御船を凝視した。
「じゃあお前…、告っちゃったわけ?」
「そう。」
「まだ、打ち解けてもいない状態で?早くね?」
「打ち解けるってなんだ。
あいつの場合、そんなの待ってたらいつになるか分かんねえ。
…まあ、最後まで"嘘だ"の一点張りだったけどな。」
「…そうだろうとも。今までのお前の素行を見て尚、いきなりそんな事言われて、
『キャー!素敵!嬉しいワ!!』なんて言えるのは能天気か馬鹿だけだ。
七瀬くんは能天気でも馬鹿でもねえ。」
御船はさっき自分が買ったカフェオレを飲み、薄笑いを浮かべた。
「良いんだよ。あれで。」
「…?」
ーーーあれで良い。
七瀬の眉を寄せた泣き顔を思い出す。
潔癖すぎる本人の性格と、その反動からくる快感への渇望に戸惑い、狂い、苦しむ顔。
そんないじらしい姿がたまらなくかわいい。
ーーーだが、
昨日、御船が駆けつけた時の涙は違った。
あれは、もちろん、快感からくる涙ではない。
あれは…、
恐怖と、後悔と、自己嫌悪から来るものだった。
そして、その後の七瀬の話を聞いた時、
その予感は確信に変わり、強い憤りを覚えた。
そんなものを七瀬に植えつけた連中に。
ーーー道理で。
初めての時、あんなに敏感だったわけだ…。
だが、ここまでだ。
どんな行為を過去に行なっていても、どんな傷を負わせようと、もうこれ以上、
その事について、七瀬が煩うのは何としても、
避けたかった。
ーーー今は良い。俺の言葉が信じられずとも…。
それで良い。
このままゆっくり、時間をかけて、
甘く我を失うまで、溶かしてゆく。
徐々に上塗りして、
この腕に堕ちた時に塗りつぶししてしまえばいい。
あの告白はその第一歩だ。
…それに、
「…なあ…。」
「?」
ーーーあの顔は反則だよなあ。
あの七瀬が、
御船に初めて礼を言った時の、
あの顔。
花が開いたような笑顔。
御船の口角がまた上がる。
ああやって泣かせて泣かせて、追い詰めた後で
ああいう顔が出来るのは良い兆候だ。
ーーーこれで良い、
「それにな、大輝。」
「だから、何なんだよ、さっきから。」
「まったく、脈なしってわけでもないんだぜ?」
「…へえ?」
「昨日だって、あれから七瀬は自分のベッドに俺を入れてくれたんだから。」
長倉は自販機から出したジュースを地面に落とした。
「…やったのかよ。」
「やってねえよ。俺は約束したことはちゃんと守るよ。やらないって念を押した上で、
七瀬が言うには、椅子で寝ようとする俺を哀れに思い、入れてくれたんだと。」
くつくつと肩を揺らして、御船が笑う。
ーーーああ、素直じゃない。
「…七瀬くんも随分弱ってたんだな。
お前みたいな猛獣、ベッドに入れるなんて…。」
「おい、俺は本当に何にもしてねえぜ?」
「本当かなあ?」
プシュ、とジュースを開けながら、長倉は赤い頭を傾ける。
疑わしい、と言うように眉をひそめる。
御船は悪戯を指摘された悪戯っ子のように
ばれたか、と言わんばかりぬ、得意げに微笑んだ。
「…本当だ。」
ーーーまあ、ちょっとした悪戯はしたけれど。
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