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片思いを合わせて…
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御船の腕に抱かれながら、七瀬は息を潜めて、
御船の言葉を待つ。
話を聞いてくれ、と言われてから、
もう随分沈黙が長く続いてる。
強く抱きしめられているせいで、七瀬からは御船の表情が見られない。
今、どんな気持ちでいるのか、察することも出来ない。
「…俺は、最初からお前を見てた。」
不意に、ポツリと呟くように御船が語り始めた。
「入学してすぐに、クラス委員を決める時、
クラスの誰もがだんまりを決め込んでた。
みんな面倒臭いし、だるいし、まだあまり目立ちたくないし、緊張もしてたりで、誰も手を挙げなかった。俺なんか、話すらまともに聞いてなかったしな、担任が困り果てた顔をしてたのはぼんやり覚えてる。だけど…。」
そんな中で…、
抱きしめる御船の腕がきゅっと強くなる。
「お前だけは手を挙げた。
静かだったけど、まっすぐに。」
七瀬は言われて徐々に記憶が蘇ってきた。
ーーーそうだ、そういえば…。
静かな教室で、誰もが困ったような顔でいたので居た堪れずに手を挙げたんだった。
身の程知らずだとは思ったけど、やりたくない人がやらされるよりはマシかと思ったのだ。
「担任はあからさまにホッとした顔をしていたな。」
思い出したように、御船がクスリと笑う気配が伝わって来る。それと同時に、なんだか七瀬も気恥ずかしくなった。
ーーーそんな前の事を覚えていたとは…。
「俺は、ガチガチの優等生なのか、ただの目立ちたがりなのか、どっちだろうと、お前を見るようになった。最初はほんの、好奇心だったのかもしれない。」
そんな時だ、と御船が囁く。
「偶然、中庭で、お前が女に告白されてるのを見たのは。」
「え?」
咄嗟に七瀬は顔を上げようとするが、御船の腕がそれを阻む。構わず御船は続けた。
「お前はもう覚えてないかもしれないけどな、
俺はよく覚えてる。お前はハッキリと、でも誠実にお断りしてたけど、でもその時の、
お前の顔があまりにも……、」
御船が少し言い淀む。
ためらうような思い返すような口ぶりで呟く。
「あまりにも、眩しそうで、綺麗だったから。」
まるで手の届かない宝石を見るみたいに、と…。
七瀬の心臓がきゅっと縮む。
「…その時だ。
こいつはガチガチの優等生でも、ただの目立ちたがりでもないんだとわかったのは…、」
御船の鼓動も次第に大きくなって来るのが、七瀬にも伝わり、七瀬の胸も熱くなる。
「俺がお前のその瞳に強く、焦がれたのは。」
七瀬の喉がひゅっと鳴る。
そんな七瀬の首筋に御船は顔を埋めた。
「去っていく女を眩しそうに見つめるお前が、
俺には眩しかった。今まで見てきたどんな人間とも違う輝きだったから。
初めて、一目で囚われた。」
熱い息が、耳朶にかかる。
その声があまりにも甘くて、七瀬は思わず脱力しそうになってしまう。
しかしそうはならぬよう、御船の背中に回した手で彼のシャツをくしゃりと握る。
「それから、俺はお前を、本気で落としにかかった。なりふりなんか構わなかった。
どうすれば、お前は俺に興味を持つだろう、
どうすれば、お前の心を捕まえる事ができるだろう、
どうすれば…、あの瞳を俺に向けてくれるだろうと、それだけを考えて。」
なんせ、俺とお前はまるで正反対だったから。
「勿論、お前に告白する女達ともな。
あいにく俺は今まで、本気で誰かを射止めようとした事なんて無かったから、思いつく方法なんて、せいぜい二つしかなかった。」
そこで少し、御船の声が低くなり、
七瀬の背筋がゾクっと冷えた。
御船は七瀬の耳に直接噴きかけるように囁く。
「一つは何もわからなくなるくらいまで無理やり
お前の事抱き潰してやるか…、」
御船の身体が熱い。これまでに感じたこともないくらいに…。
「もう一つは、外堀から囲い込んで、
ゆっくりと逃げ場を塞いで行くか、の二つだった。」
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