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中に入ると、近くに居た先輩が手を止めてこちらを見る。
「見学?そっちに椅子あるから、座って見ていきなよ。」
「はい!ありがとうございます。」
にこっと笑う、雰囲気の良い先輩だっな。フルートを手にしていて、さっきのスケールで指をつまらせていたのはこの人かな?と余計なことを考える。はきはきとよく通る声で先輩は言葉を続けた。
「基礎練終わったらパート練だから、希望楽器あるなら決めておいてね。あ、経験者かな?」
「はい。ホルンやってました。」
「ホルン?わあ、珍しい。今年はホルンの経験者2人目だよ。ほら、あそこに座ってる女の子もホルン吹いてたらしいよ」
なんと、それは本当に珍しい。
自分で言うのもなんだが、ホルンというのはあまり目立つことのないパートである。マーチでは裏打ちといって、リズムを刻むだけで終わることもザラだし、ポップスなんかでもメロディはほぼない。けれど音色には深みがあるし、音域も幅が広くて、自由な楽器だと思う。ギネスブックに世界で一番難しい金管楽器として乗るほどには難しいが、この楽器を選んだことを後悔したことはない。
…あとで、話しかけてみよう。
ホルン吹きに変人はいても悪い奴はいない、と、中学の先輩も言っていたことだしな。
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