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結多にとって信じられないことだった。
まさか自分の夢に色彩が加わるとは。
しかし、同時に不安も生まれた。
この扉のどこからか包丁男が飛び出すのでは?と。
しかし、それも杞憂に終わる。
向こう側から男が見えた。
とりあえず隠れなきゃと適当に近くに合った浅葱色の扉に入った。
ストンと、視点が低くなる。目の前には群青の海と白い灯台、それと、少し若い父親がいた。
どうやらこれは、幼いころに父と釣りに出掛けた時の記憶だ。
実際は2匹ほど小さな魚が釣れたくらいだったが、夢で父は巨大な鯛を釣り、ガハハハと高笑いしていた。
最初はただの偶然かと思ったが、その日の朝、父親が食パンをかじりながら、「今日夢で鯛を釣ったんだ。いいことありそうだなあ」と上機嫌になっていたのを見て確信へと変わった。
自分は他の人の夢に入り込むことが出来た、と。
この日以降、ただ殺風景なだけの夢に扉が現れ、家族や近所の人たちの夢に入ることが出来るようになった。そして不思議なことに、他人の夢に入ると、包丁男は追ってこなかったのだ。
そのため、毎晩、母親や父親、或いは近所に住む友達や飼い犬のシンフォニが見る夢の扉に入り込んでは男から身を守っていた。
しかし、大学生になり、一人暮らしになった結多にとって、隣人の夢に入り込むことは恐怖そのものだった。
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