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じゃきり。
「え…」
信じられなかった。
何かを裁つ音と共に、黒い男が煙のように消えたのだ。
静かに、スゥッ…と。
全て一瞬だった。
「えぐい夢だな、全く…おっと、いかんな、平気かい」
そう言ってカイムが結多のほうを振り返る。
いつの間にか彼のその白い手に鋏‥‥‥‥‥よく庭師が使うような長い柄のついた鋏が収まっていた。
たった数秒前までこんなもの何処にも持ってなかったのに。
「はい…」
内心怯えながら返事をすると、彼は手を差し伸べてきたので、ほぼ反射的に手を握り返す。
指先は冷っとしていたが、掌は温かい。
「あの、」
「ん」
「ありがとうございます、助けていただいて」
「ああ、もう動けるか」
「はい、出来ればお礼がしたいんですけど…」
理解できない事が多すぎて、混乱しているが、とりあえずお礼はしとかないと、とそう思ったのだ。
カイムは「いや、お礼なんて」と一瞬困ったように眉毛を八の字にして笑うと、あ、そうだ、とすぐ思い付いたようだ。
「君、明日暇か」
「え、明日ですか?」
明日の授業は確か、午前中だけだったことを彼に伝える。
「分かった。じゃあ、午後3時に俺の事務所に来てくれるかい」
「え!?」
住所は名刺に書いてあるからと伝えると、困惑した結多を他所に歩き出した。
「え、ちょっとまだ返事」
「来るか来ないかは君の自由だ。ただ、来てくれれば」
このおかしな夢について、教えてあげられるかもね。
にっこりしながらこちらを見つめる群青色の瞳がまた結多の目を釘付けにする。
思わずゾクッと鳥肌が立つ。
やがて、今まで夢の中では見たことも無いような濃い霧に包まれ、カイムは姿を消した。
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