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「ところで、フィオリ王よ。サランの部屋は何処にありますの?あの寝坊助さんを久しぶりに起こしに行きたいわ」
純粋な微笑みを浮かべて母ステラは問う。
「そうだね、私もあの子の父親としてどのような環境で暮らしているか知りたいと思っていたからね。ぜひ案内してくれないか?」
ここは食事の席。フィオリは
「ええ、食事が終わりましたらぜひ。申し訳ないですが、我は職務を遂行してから伺います。側近のレミルに案内を任させてください」と返答した。
そう、表向きの“部屋”はもともと用意してあるのだ。何百年も前、1人目の正室を迎え入れた時から。
そして、食事が済めばレミルが2人を“部屋”へ案内していた。
が、
「あら、きっとここがサランのお部屋だわ」
「ふふ、そうだね。あの子達兄弟は隠れんぼが苦手だものね」
“部屋”ではなく、本当にサランが使用している部屋の前で彼らは止まってしまった。
「えっ?」
レミルは驚く。
なんの変哲も無い扉の前で2人が確信したように足を止める、そのことが摩訶不思議でならない。
「…なぜここだと思ったのか聞いても良いですか?」
「ふふっ、実はあの子は、いえ、あの子達兄弟は皆なぜだか草木と仲が良くてね?ほら見てレミルさん。この扉の下を」
「あっ…花弁?」
「そうですわレミルさん」
「では扉を開けていただいても?レミル殿」
「あっ、少々お待ちください。今フィオリ様からの伝言で共に部屋へ入りたいそうですから。お待ちになって居てください。すぐにお連れして来ます」
レミルは咄嗟に嘘をついた。
その理由は、ここに今サランは居ないことが関係している。食事中にフィオリから脳内へ直接受けた指令によりサランを“部屋”へ運んだ。
そして2人を“部屋”へ連れて行けば豪華な内装と広さ、快適な暮らしぶりが見て取れ、ソア国王と女王は安心して帰国できる…はずだった。
この2人が‘部屋’ではなく、部屋へ入ってしまったら、、ーーの質素な暮らしがバレてしまう。
「(予想外です。早くサラン様をこちらの部屋へ移動させて、フィオリ様にも来ていただかねば)」
パリンッ!!!
「えっ?」
「なんだね?!」
「これは!?(結界が…破られた!??しかもサラン様の部屋!)」
レミルはこの部屋の扉を開けた。
本当は嘘を隠したかったが、緊急の事態である。
2人に“部屋”へ誘導できなかったこと、いきなり城内の結界が破られる。この2つに驚きなど隠せない。
「2人は下がってください!何かが侵入したのかもしれません!」
そう言ってレミルが部屋に一歩を踏み出した。
さわり…
「は?」
力強く踏み込んだ足に衝撃はなく、むしろ柔らかな草原が衝撃を吸収していた。
そして
「な、ここはサラン様の部屋だったはず…なんだ、この草木は……。なぜサラン様もここにいる??」
大理石の白で統一され、家具も少なかった質素な部屋が一変。
床は芝が生えて壁には木のツルが上り、ベッドを囲むようにして大樹が出来ていた。
そして、守られるようにサランはシーツの上で熟睡だ。大きく開け放たれた窓と揺れるカーテン、暖かな日差し。小さな花まで咲いている。
「ここが、本当にハーシュッド城なのか??」
「何事だレミルッ!」
遅れて登場したフィオリもこちらを見て目を丸くする。
「フィオリ王!っ…今の…結界を破ったのはまさか、植物…でしょうか…」
「ああ…そんな気がするな……っ、まさかだが…今までの結界に侵入してきた植物は…この部屋へ向かって来ていたのだろうか…いや、、あり得るぞレミル…方角が一致する…それに、なぜアイツがここにいる?」
「そんなことが、、、?!あっ、そうです!サラン様っ!」
レミルは自然の中へ入りベッドの上のサランを抱き起す。よかった、何の異常もないようだ。
「んぅ…?レミルさん?王様…?」
あくびを1つして目をこするサラン。風呂場から眠っていたため、部屋にいることには疑問を感じていない。そして部屋が花だらけなことには驚かない。
「(?サラン様はなぜ驚かない?)」
そう、実はこの草木は3日ほどでできたものだった。
ベッドの下から勝手に根を生やしていた木々をサランは楽しそうに成長を見守り、侍女は慌てて虫などを外に出すためによく出入りをしていた。
「あらっ、とても素敵なお部屋ねサラン」
「ははっ、ソアの時と何も変わらないなぁサラン。よかったね」
ひょこっと顔を出した夫妻はにこにこと微笑む。
レミルとフィオリは全く話について行けなかった。
「(フィオリ様…なぜ勝手にサラン様が“部屋”から部屋へ移動したのでしょう?それになんなのです?ソアの民は…)」
「(全くわからない。それにこの植物たちも一体…)」
結局、結界は“部屋”と部屋、の窓の2箇所が破られていた。
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