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「あの、どこにいく準備なのですか?…いつものお散歩とは違うの?」
侍女は何も答えない。
先ほどレミルから渡された草かごに必要なものを詰めていく。
サーシャの森に行くと聞いて、
スケッチブックと筆、絵の具を用意していた。草かごにスペースができすぎており不思議だったが、侍女によってタオルや服もどんどん詰め込まれてしまう。
「(やっぱり、何か、、いいえ、考えてはいけませんっ)」
サランは大事なものを全て草かごの中へやった。
辞書、紙とペン、そして…つい数日前に着たあのワンピースを。
「さあ、行きましょう」
「はいっ」
やっぱりです
サランは先ほど城内で考えていたことが的中したことに落胆する。
「(わたしは、捨てられたのです…)」
だって現に、迎えがこないのだ。
「(もう…夜になってしまいますよ…早く帰りたいです…あの人のいるところへ…でも、、、もう、あそこにわたしの居場所は…ないのですね)」
サランは芝の上に座り込んだ。
ずっと、待っている意思を…見せていたつもりだった。迎えを待っています、と。
けど、足はもうもってはくれない。
カクリ、と力が抜けてしまった。
動物は小さく鳴いた。
元気を出して?と。
「っ、ひっく、っふ、わ、わたしは、もう捨てられちゃったのです…か?っ、ぃやだ…昨日までみたいにっ、ふぅ…ひっく、あの時のようにっ、っ、わたしを抱きしめて…王様っ、」
えぐえぐと泣く子どもは、本当に迷子のように不安げだ。
けれど迎えに来る人影はなかった。
月光も雲で遮られ、辺りは何も見えなくなった。
サランは肌寒さと悲しみから逃れるように目をきつく閉じる。
「サラン」
王が優しく名前を呼んだことを思い出す。
「王様…」
涙の跡を残しても誰にも拭われることはなくて、ああ、あの時間がまた来てほしい…あの時に、戻りたいとサランは丸まり眠った。
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