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どこに行けばいいかも分からず、サランは立ち尽くした。
泉は朝日を浴びて輝き、風に揺られるたびに水面も木陰も揺れる。
「(…来てくれない…)」
動物に囲まれたまま、サランは空を見上げていた。
「……」
思うことはたくさんあるのに、声に出せない。言葉にならない葛藤が喉まで出かかる。
キュウキュウ…
「…うさぎさん…どうしたの?」
うさぎに案内されるようにサランは歩む。足裏には柔らかな芝の感触を感じ、風は熱いからだを冷ましてくれる。
サランは何も考えぬまま歩き続けた。とても、つかれていた。心の中で、ずっと泣いているからかもしれない。
うさぎはそんなサランを労わるように空を仰いだ。
するとそこには
「おうち…?」
大樹の根元に小屋があった。いや、小屋と大樹が一体化したような、飲み込まれているような状態の建物が。
「ここは?うさぎさん、誰の家なのですか?」
キュウキュウ
「まあいらっしゃらないの?…ありがとう…うさぎさん。みんな。こちらを借りますわ」
サランは動物たちの意思を感じ、できるだけ朗らかに笑った。
動物はサランに住む場所を提供できてご機嫌そうだ。
いつのまにか草かご3個は運ばれていた。鹿に感謝を伝えサランはもう一度、嬉しそうに笑う。
「(いけません…こんなに、わたしは心配されて…優しさに包まれているのですから。笑いましょう、みんなに感謝を伝えるために…自分は、悲しく…ないのですから…)」
サランは嬉しそうに去っていく動物たちを見届け小屋へ入る。
戸を閉めた瞬間、サランは倒れた。
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