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「大丈夫よ、うさぎさん」
サランは動物が運んでくれた木の実を食べてあの日から10日、生きていた。
最初に来た時も埃にまみれた様子はなく、木のぬくもりを感じる小屋の中。今はそこに腰を下ろしている。
そう、ベッドの上に。
なぜか比較的綺麗な状態の小屋内装には、ベッドの他にテーブルと椅子、暖炉があった。
小屋に入れない大型動物は戸や窓枠から顔を覗かせ、小動物たちはサランの周りに集っている。そして
「ふふっ、くすぐったいです」
サランの少し大きくなったお腹に擦り寄っては嬉しそうにキュンと鳴く。
摩訶不思議なことではあるがサランは男にも関わらず腹に子を宿していた。
ハーシュッド国で摂らされていた食事と、王の精液が関係しているのだが、これはサランの知らないことである。
それからというもの、悪夢や腹痛…に悩まされるが城内にいた時より笑うことが多くなったサラン。
そして心を締め付ける原因のフィオリ王と共に過ごすことはできなくても、授かった子どもとここで暮らせれたら幸せだと思うようになった。いや、思い込むことにした。
「(大丈夫、大丈夫。…この子が、あの子たちがいてくれるもの…寂しくない、寂しくない…。
……ここでは陰口も言われないもの。動物たちが優しいです。痛いこともない。怒られたりしない、…ひとりぼっちになるお食事会もない、王様からも冷たい目で見られることなんてない……だからここは大丈夫、、大丈夫)」
ここで死ぬかもしれない、という恐怖。
残してしまう大切な人の顔が次々に浮かんでしまって、怖くて怖くて眠れなかった。倒れるまでの不眠に人肌が恋しくてすすり泣くこともあった。
みんなはどうしているんだろう、わたしがいなくなったあとはどうなるんだろう。
どう、思われるのかしら。
悲しいと、泣いてくれる?
そもそも、ソア国にわたしのことはどう伝わっているのでしょう。
王様、、
王様は
わたしがいなくても、いいのですか?
わたしは…
わたしは、、
まだ、一緒に…
これからも…ずっと…
本当は、キラキラして、眩しくて、嬉しくって、心から幸せを感じる結婚式をあげたかった。
どきどきと高鳴る胸を押さえて、いろんなことをお話しするんです。
まだ見ぬ、旦那様と。
そう、ずっと大事に育んできた夢…
叶わなかっけど、指輪の1つもないけれど、きっと、王様の怒った顔は、
いつか
いつかいつかきっとほがらかに笑って、わたしを包み込んでくれるのでしょう?
好きだ、って…言ってほしい。
わたしも、きっと笑って応えますから。
サランはいつかの日のために、ずっと‘愛している’の告白を練習していた。…使う日は、来ないのだろうけど。
暑さがなくなり、草木は赤に色づき、枯れていって、雪が降る。
動物は土へもぐり、サランは小枝を集めて火を焚いていた。
「もう少しで、あなたに会えるのですね」
草かごからシーツを取り出し お腹を包める。
我が子が生まれるのをサランは直感した。
「あと、少し…」
大きな汗の粒が額から湧き、少しずつ息が荒くなるーー。
でも恐怖はない。
「っはやく、抱きしめ、たい、です…」
2日後
大雪の夜、産声が上がった。
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