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「…今年の冬は異常です…」
レミルは書斎の窓へ手を添えてつぶやく。
しかし静かなこの部屋の中ではよく響いた。
「…ああ。それにこの国には冬を越す知識も道具もない」
「本当に。燃やすものがなくて大きな火もつかない、となれば家庭での暖炉代わりなるのはランプしかありませんものね…それにここは南の楽園と謳われる通り、年間を通してほとんどあたたかいのに、、、なぜこんなに冷えているのでしょう」
「…こんな異常は見たことがないぞ…それに、城内もこのザマだ」
「はい。家臣の一斉清掃により、人が料理番と庭師以外ほとんどいなくなりましたものね、とても寒々しい光景です」
「はぁ、あいつが帰ってこればいいのにな」
「ふふ、そうですね。かれこれ30年経ちますから…」
あいつ、というのはフィオリの弟であり、火の魔法を得意としていた人物だ。
ハーシュッド国はサーシャの森以外に領地の中で木が生える場所はほとんどない。
だから住宅、城を構成する材料は全て大理石を含めた石だった。そのため夏は暑さをしのぐことができても、冬は石ごと冷やしてしまい、過ごしにくいほどこの上ない。
過去、気温が冷え切った年は記録されている中では片手で数えるほどしかない、比較的過ごしやすい国であると評価されていたのだが。
「寒いですね…」
「…この時期は梅雨と同じく苦手だ。鼻が使えない」
「本当ですね(そういえば王は水と寒さに弱かったですね)」
「…森で見つけた子どもはなぜかぱったりと現れなくなったしな」
「ああ。あなたが妻に迎えると宣言されたお方ですね…どのような容姿だったのですか?」
「髪色以外…見てはおらん。眠っているときに限って現れるのだ。我の獣化に怖気付くことも無く我の尾で遊んでいたからな…下手に目を開けることができなかった」
「な、、、なんと…。それはそれは…幼い子供ができる技ですね……ああ、では匂いを覚えていらっしゃったのでは?あなたは鼻が効きますでしょう?」
「それが、あの泉によく入っているのか、本当の匂いが分からない…ただ、花や木々、動物たちの匂いがしていた」
「、そう、ですか…では春を待ちましょう?きっと見つけますから」
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