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恥ずかしさで硬直するサランをよそに、2人はまた会話を再開させた。
「アーサー、下がって良い。報告書のまとめはまだ甘いが、簡潔であった。よくまとめたな。…お前が帰ってきて助かった。帰ってからは半年も庶務ばかりだっただろう。民にも帰ってきたことを報告せねばならんし、今日は休むように」
「はい。では、えへへ、お昼寝してきます。ああ、そうです兄様。国のことではないのですが報告が。」
「なんだ?」
ちらり、とアーサーがこちらを一度見た後、古代語で話し始めた。
「サラン様が……だと、…、また、…する…?では、…」
自分の名前が入っていることに気づき、王を見上げると、少し驚いたように目を見開き、片眉を器用にあげた王と目があった。
「そうか……。わかった…聞いて…」
まだまだ理解できない単語があり、少し疎外感を感じたサラン。居心地の悪さを隠すように、足元で椅子に登れずジタバタしている子供達に手を伸ばした。
前のめりに傾く体制はがっしりとした腕で支えられているため怖くはない。が、この大きな腕で体幹を固定されているため、子どもたちに手が届かない。
「キャウ、」「ガウ…」
甘えるように前足の片方を動かす子どもの姿にほっこりするも、王によって体制を元に戻される。
「お、うさま?」
「サラン、アーサーとの会話は終わった。今から食事にしよう。どこの部屋で食べようか」
アーサーが退室したことを確認する。
まるで子どもに触れるな、我の腕の中にいろ、と言わんばかりの態度であったが、サランは気づかない。
(フィオリ様方のお話は終わられたのね。最後のお話は一体何だったのでしょう…)
「はい、あの、でも…」
「ああ。サランは目覚めてから1度も食事をとっていないそうだな…」
「はい。
ですから…あまり食べられないかもしれないのです」
「ああ。無理して食べることはない。…が、この細さでは今後のサランの体調が心配なんだ。少しは食べてくれるか?」
このままでは抱き心地も悪いからな、と体をなぞるように触れられ、とても恥ずかしくてドキドキしてしまう。
「は、はい…少しなら」
「では、庭で食べようか。良いか?」
「はい…あの、でも、今まではたくさん人のいる、会場のような場所でお食事されていましたが…良いのですか?」
「ああ、サランが知らぬ間にこの城内にいる人物はほとんどいない。だからこれからは我と2人きりで食事だ」
「えっ?皆さんいらっしゃらないのですか…」
(びっくりしました…ああ、でも、罵倒されて嫌な視線をたくさん浴びた場所…あそこにはもう、そんな人はいないのですね…。よかった…。それに、旦那様との食事…とても、夢みたい…)
「いいえ。厳密に言うと2人きりではないですが」
突然入ってきた声。レミルだ。手は料理を乗せたワゴンを押している。どうやら、アーサーとフィオリの会話の最中にシェフに頼んでいたようだ。
「…」
「これからは、御子様とアーサー様、5人でのお食事でしょう、フィオリ様」
「わかっている…いちいち口を出すな…」
「(浮かれている王を訂正することも私の仕事なのですが…まあ、いいですかね、サラン様も嬉しそうですし)」
サランは嬉しさのあまりにっこりと笑って王の胸にぴっとりとくっつく。
「王様、わたくし、とても、とても嬉しいです。
あの、これからも、ずっと、ですか?」
小声でこの幸せが続くか確認する。
聞いてしまった…と不安になりかけつつも、王とレミルに目を合わせる。
「ああ。これからずっとだ」
目を細めて笑う王。
しかし、どことなくその瞳の色がめらめらと燃えているような気がするのはなぜだろう。
「ふふふ」
微笑むレミル。しかしどことなくフィオリを見ている気がするのはなぜだろう。
「‘レミル。我はお前に聞きたいことが多くあるぞ’」
「‘奇遇ですね王。私も実は王に確認したいことがあるのです。あなたの慕情と浮かれ具合など。含めて’」
(また古代語で話されてしまったわ…やはり、知らない言葉がまだまだあるみたいです…)
「キャウ、キャウー、キャウー」
「ガウ…ガーウ、ガーウ」
「あっ、子どもたち!」
2人のことばかりで大切な子供を忘れるなど、母親として失態だ。王の腕をやんわりと押して床にしゃがみこむと、2匹はジタバタと膝の上に登ってきた。
「エルディオ、ティラシュア…ごめんなさい」
「「は?」」
「え?…あの、王様…?レミルさん?」
この2人は何を不思議がっているのだろうか。わからない。2匹を撫でながら困っていると、ティラシュアが突如王に叫ぶ。
「シャギャーッ!」
威嚇だろうか。
「ティラシュア、いけませんよ。お父上に向かって牙は向けないのです。ね?」
再びサランに撫でられるとコロッとお腹を出して喜ぶが、ハッと我にかえったのかまたもや王へ牙を向ける。
「王様、この子はいつも、こんな怒りっぽい子ではないのです」
「…ああ」
「ギャーーウーー!」
「あっ、ティラシュア!」
口から火を出した。しかも、王に向かって。
「っ…」
「なっ…」
王の服の裾を焦がした程度であったが、サランは王の激怒を恐れてティラシュアを庇う。
「‘申し訳ありません、王様。どうか、許してください’」
頭を深く下げるサラン。
「…サラン…」
「こ、れは…」
「‘どうやらサランにも聞くべきのようだな’」
「‘そう、ですね…。予想外過ぎました’」
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