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翌朝、フィオリは書類を読みつつ足を進めていた。
昨日思い立ったことを実行するためだ。まだ用意するものが多く、準備にあと一月ほど必要なのだが。
足を止め、窓へ視線をやる。
青い空と、空高くに浮かぶ絹のような雲。今日も晴天だ。
「……」
窓から進行方向へ視線を戻すと、ぺたぺたと足音が聞こえた。
廊下を裸足で歩く者は城内で1人しかいない。
「王様…!」
そう、廊下の奥に見えたのは…サランだ。
周りにはアーサーもレミルもいないようだ。一体どういうことだろうか。子どもの姿も見えない。
フィオリはサランの元へ歩く。
サランもこちらへ向かって来ている。
「サラン、目覚めたか」
「はい、おはようございます王様」
「…ああ。レミルと一緒ではなかったのか…?」
サランの茶色く、さらさらな髪を撫でる。
それは朝日を浴びて輝いて綺麗だ。
「はい…。王様が、どこにもいらっしゃらなくて……それで、怖くなってしまって…」
そうか。1人にさせたことがよくなかったのか
子どもたちも獣化したままだからな…
「…すまないサラン。我は仕事をしていた。今から朝食にしよう。子どもたちとレミルはどこだ?」
サランの部屋へ足を進めながら質問をする。
もちろん、ふらついた足取りのサランの背を支えながら。
「エルディオとティラシュアは、まだ目覚めなくて…レミルさんはまだお会いしておりません。
王様、今までわたしが眠っていた間、あの子たちは何を食べて過ごしていたのですか?」
「そうか。ではじきに子どもは目覚めるだろう。
今の質問の答えは果実や生肉、野菜だな」
「えっ?」
「…何かおかしいことでも?」
「お、王様っ、赤ちゃんにそのようなものを与えていたのですか?!お腹を壊してしまいますっ」
「今まで体調を崩した子はいないが」
「そ、そうなのですか?」
「ああ。我もそのように育ったとレミルから聞いている。我たちの血筋ある者はそれが普通だからな。
では、サランは子どもたちに何を与えていたのだ?」
「そうだったのですか…、やはりソアとは違うのですね…
わたしが2人を育てている時は、お乳を与えていました」
「………」
サランの部屋の前で立ち止まる。扉をあけてやるとお辞儀をした後部屋の中へ入っていった。
その後ろ姿を見ながら後に続くと、子供達が目覚めたようだとサランが微笑んでいる。だが、我は今そのような光景より先程のサランの発言にしか集中できない。
「乳を…吸っただと…」
未だ獣化が解けていない2匹だが、それならばなおのこと、生肉を噛みちぎる歯もあれば咬合力もある。
それが、母親の乳汁を飲んで過ごして来たと?
笑止千万。聞いたことがない。
それが獣化したままの理由か。いや、そうではないだろうが、まあ、なんと腹立たしいことか。
すると後ろの扉からノックの音が聞こえ、レミルが入室した。
「おはようございます。…王様、サラン様、エルディオ様、ティラシュア様」
レミルに笑顔で挨拶するサラン。レミルも微笑む。
「サラン様は、どうぞこちらの服へお着替えください。
ずっと寝巻きでしたので、新しく服を用意いたしました。…私は退室しますから。着替え終わりましたら王様と御子様と共に食事室へいらしてください。朝食の準備をしてまいりますね。では、これで失礼します」
「はい、ありがとうこざいますレミルさん」
「ギャウー」「キャウー」
「…レミル、料理長に、子ども用の肉は硬めでも良いと伝えておけ」
「…え、ええ。伝えておきます」
(あなた、何か嫌なことでもあったのでしょう)
直接脳内にレミルの声が届く。
(ああ。少しな)
(そうですか…まあ、余計な口出しはしませんが、理由は後ほど聞かせてくださいね)
(ああ。)
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