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「ふぅ。あとは承認待ちだけか…」
フィオリは書斎で1人、書類と向き合っていたが、やるべきことはだいたい片付いていた。
椅子をくるりと、1回転させた後、窓に目をやる。
ハーシュッド国が一望できる光景だ。
フィオリは立ち上がり、窓のそばへ立つ。
壁一面が窓のため、外は全て眺められる。白亜の家が真っ直ぐに連なっており、家と大通りの間に掘られた溝には美しい水が流れているこの街の眺めも、はっきりと。
「…」
視線を遠くにやれば、もくもく、と黒い煙を出す場所がある。あそこは工場が多く集まる作業場。そして、さらに奥を見渡せば空の下に茂る緑の木々たち。サーシャの森だ。
視線を左横にずらすと、空とも似ている青い海が。
大きな木造の船が何隻も止まっている。
よく眺めると、国民が商いをしていたり、貨物を運ぶ民の多さがよくわかる。
「もう、我だけの国ではないのだな…」
その声は、小さいながらも、芯があり、優しい響きを持っていた。
アーサーも帰ってきた。愛しい妻がいる。子どもがいる。
そして
今起こしている改革で得る、新たな家臣と。
頼もしいレミルもいるのだから。
「…ああ、あいつは帰ってくるのか?」
思い当たる人物に首を傾げながらも、フィオリはこの国のために最善を尽くそうと心に誓った。
「‘フィオリはきっといい王になるよ’」
そう信じてくれたあの人の声を思い出しながら。
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