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「ああ、待ってくださいお姫さまっ」
「ふふ、アーサー様、早く行きましょう?」
今2人はハーシュッド国の街中を歩いている。
サランとアーサーは頭に深くフードを被っており、街中に顔がしれないようにしている。ここで騒がれてしまえば、森に着くのが遅くなると考えたからだ。
はじめ、瞬間的移動をするか馬車を用意しようと考えていたアーサーだが、サランが歩いてみたいと言ったため
とった策略でもある。
「まあ、とても素敵な街並みですっ、とても良い匂い。あそこで料理を作っているのね!潮の香り?海!海が見えますねアーサー様っ」
嬉しそうなサラン。まるで子どもみたい。そう思ったアーサーだが、その通り。アーサーより190歳年下の子どもである。
手を繋いで歩く。
1時間歩いてもまだ街中だ。流石に疲れただろうと思いこまめにサランの顔色を見るがずっとにこにこしている。
日が暮れる、まではいかないがてっぺんにあった太陽が傾いてきた。
「お姫さま、魔法を使っても?」
「…ぁ、そうですよね。街を見るのが楽しくて…ごめんなさい」
しょぼん、としたサランにアーサーは驚く。疲れているの思っての声がけだったが余計な気遣いだった。
「アーサー様どうもありがとうございます。魔法で森まで連れて行ってくださいますか?」
「ええ。もちろん」
森につけばサランは嬉しそうに王に近づいた。
すやすやと眠る姿にお構いなく。
(ふふ、兄様に会えて嬉しいだなんて可愛い人だな)
アーサーは微笑んでいた。
しかしサランは王に近づいたと言う意識はない。
フィオリは獣化した姿のまま眠っていたのだ。
サランが近づいた目的は真っ白でふわふわしている動物と戯れるためであった。
まさかサランが獣化についても、
あの白色の動物がフィオリだと知らないことなど
アーサーは考えてもみなかった。
「ふふ、元気にしていましたか?大きな猫さん」
さわさわと触り抱きしめるようなサランの動きに動物が身じろぐ。フィオリのことだが。
動物の目が驚いたように開く。
「おはようございます。ずっと眠っていらっしゃったのですか?」
にこにこと問いかけるサラン。
フィオリは混乱していた。アーサーがいることから、サランがこの森に来れたということはわかる。
だが無邪気に自分の体に触れるサランに目が点となるのだ。
(…もしや…サランは我だと気づいていない?)
フィオリの推測は正しい。
(そうか…そういえば…。
サランは我らが獣化できることも、獣化した姿を知らないのだな…ここで獣化を解くと驚くだろう…隠し通せば良いものか??)
「ふふ、お姫さまー
兄様の毛並みは世界一だと思いませんかー?
「えっ?」
(あ の ば か ア ー サ ー)
「お、うさま?」
びっくりした顔のサラン。スッと離れていく。
「??どうしたのですか?お姫さま」
なんとも言えぬ沈黙が生まれる。
はあ、仕方がない。
獣化を解いてやった。
「おうさま…」
「…ああ」
これで嫌われては生きていけない、そのような気持ちになった。
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