アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
56
-
「…ティラシュア、あの子はどうしたのでしょう」
ティラシュアと共に入浴しながらサランは問いかける。
今はレミルがエルディオを見てくれているようだ。
「ギャウー」
ちゃぷん、と肩まで湯に浸かり思案する。
「…ティラも分からなかったのですね…、わたしもです」
胸のあたりに犬掻きしてやってきたティラを手で支えてやる。そのまま擦り寄るティラシュア。
(…もし、病だったらどうしましょう……わたし…わたしが支えてあげないと…きっと今も1人でエルは苦しんで…)
サランは腕の中にエルディオを抱いて足早に浴室を出た。
(ティラシュアも不安がっています…一体どうしてこんなことになったのでしょうか)
ぱたんっ
「レミルさん、エルディオは…?」
サランの部屋を開けるとレミルが椅子に座り、ベッド上のエルディオを見つめていた。
「サラン様、いえ、先ほどとお変わりはないです」
日が沈み、薄暗くなってきた時間。
部屋のランプがゆらゆらと揺れ、エルディオの呼吸に合わせて小さな影が上下に動く。
「エル…そろそろ夜ご飯のお時間ですよ」
「…キャゥ」
目を開けずに小さく鳴くエルディオ。
レミルは席を変わり、ワゴンを引いてきた。それはエルディオ用の食事が乗っている。少量ずつ、野菜も肉もミルクもある。
スプーンに温めてあるミルクを乗せて口元へ。
けれどエルディオはぴくぴくと鼻を動かしただけで口を開けない。
「お願いよ、エルディオ…少しでいいの…食べて?今日は何も食べていないのでしょう?」
「ガーウ…」
サランとティラシュアが声をかけるその背中を、ドア近くで見守っていたレミル。
(……今夜も食べないのでしょうか…)
「…容態はどうだ?」
「王よ、…相変わらず、ですね…口に入るものも少ないようで」
フィオリが本日の業務を終えてやってきた。パーティーまであと1月を切り、仕事が増える中での子供の看病をすることは忙しいが、フィオリも心配なようで、早々とこちらにやってきた。
「…やはりあいつを呼ぶべきか?」
「ええ、他の獣族にも連絡を取りましたが、病に伏した症例がなく手の出し用が分からないと…今頼れるのであればあの人の力を借りるしかないのでは?」
「、ああ。連絡を入れてくる」
くるりと背を向けて書斎へ歩き出すフィオリ。レミルは小さな同胞が床に伏すことが痛ましくてならない。
(どうか、早く良くなりますように)
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
56 / 85