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夜更。
サランはエルディオのそばで眠りについていた。
あれから数日たった。サランは看病を夜間も続けており、浅い睡眠をとり、何度も背を撫でてやっては眠りにつく、その繰り返しをしていた。
「…エル…」ハッとしたようにサランは目を開けるが、エルディオは変わらず寝息を立てているだけ。目を開けてくれない。
(どうか、この子が元気になりますように)
その時、カーテンが揺れた。
「ぁ…サーシャさん?」
ベランダから入ってくる人影は、懐かしいものだった。深緑のローブを見に纏ったサーシャだ。
優しく微笑むサーシャ。
「サーシャさん、いらしてくださってありがとうございます…でも、この子たちは今眠っています…」
エルディオに寄り添うようにティラシュアも眠っているのだ。感染する病だと考えて2匹を離そうとしたのだが離れなかったのだ。
せっかくサーシャが来てくれたが、時間も時間。
サランも不安や不眠でサーシャに微笑むことができない。
「いいよ、あなたに用があるから」
気付けば側までやってきていたサーシャ。そのままサランを包み込む。
「今はお眠り」
「ぇ、あ、だめ、です…エル、ディオ…が」
サランは抵抗するも、、気絶してしまう。サーシャはそれを確認し、エルディオにも手を伸ばす。
「いい子…お前もお眠り…」
背をひと撫でしてやれば、エルディオのか弱い呼吸は和らいだ。「カゥ…?」そっと目を開けて枯れた声を出す小さな子どもに、サーシャは口元に水を運んでやる。
ペロペロ、と満足するまで与えれば、そのままコテン、とエルディオは眠りについた。
「うん、いい子だね…ティラシュア、お前も賢いね」
そっと撫でてやる。
あとは大丈夫だろう、とサーシャはサランへ目を移す。
あなたの願いは叶えたいから。
子どもの横にサランを寝かせてシーツをかけると、サーシャはその場を去った。
翌日、早朝に目覚めたフィオリは、サランの部屋を覗く。本来はサランとフィオリは同じ部屋で眠るはずだったが、子どもを看病するために、今は空いたサランの部屋も使って看病できるようにした。
ベッドへ近寄れば、サランに何か魔力がかけられていることを知る。
「……いつだ」
それも、治癒魔法…と、催眠。高度な技力がなければかけられないものだ。結界が揺らいだ形跡もない。となれば、アーサーだろうか。
後で聞くとして、子どもは…。
「ギャウー…」「カゥ…」
寝息を立てて眠っている。どちらも同じ程度の呼吸の強さを感じる。エルディオは声がかすれているみたいだが。少しは回復したということだ。
「よかった。…よく眠れたか?」
2匹に手を当てる。違う部屋で過ごしたとはいえ、心配はしていたフィオリ。労るように背を撫でる。
「…治癒か」
どうやらこちらにも魔法がかけられているようだが…熱がこもっているかのように、手から感じられる魔力は微量で一体何の魔法系統かは分からなかった。
「……まあいい。生命を脅かすものでなければ」
フィオリはサランの髪も撫でてその場を離れた。
その後、城門でフィオリとレミルはとある人物を待った。
人体・獣ともに解剖生理学において圧倒的知識と治癒能力を得た人物であり、獣化できるフィオリの戦友。
その者はクラシアと言い、所有する国はハーシュッドよりも小さいけれど戦闘民族の住む荒れた地で王として君臨している男だ。
「あいつはかなりの変人だ。レミル、気をつけるように」
「ふふ、言われなくとも承知いたしております。クラシアとの付き合いが長いのは私も、ですからね。王よ」
アーサーは記憶にないだろうが、数百年前の戦争時代にアーサーを助けた命の恩人でもあるクラシア。
可愛らしい響きの名とは裏腹に、下衆で野蛮と呼ばれるその男は絡むと厄介な存在とも取れる。
「…いらしたようですね」
「ああ」
それでもそのような客人を招いたのには理由がある。
「やあっほぉ〜レミル〜、フィ〜オリ」
「お待ちしていました」
「久しいな…よろしく頼むぞクラシア」
「うん〜任せなよ〜〜
で?どこかなぁ〜。お前のこ、ど、も〜…ふふっ」
エルディオの病態を知ることと、その治療のためだ。
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