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とうとう、この時を迎えたのですね。
エルディオが伏せてしまって、心待ちにはできませんでしたけど。
「キャウー」
エルディオは足をぱたぱた動かせるほどに回復した。ティラシュアは、徐々に良くなっていく片割れの姿に喜び、ベッドの上を走り回っている。
「サラン、着替えたか?」
ノックと共に夫の声がドア越しに聞こえる。
今はパーティー当日の朝。これから朝食をとりに行って、それからは夜のパーティーに備えて生花やランプで装飾する予定だ。
「はい、用意できました」
子どもたちを腕の中へ抱えてベッドから腰を上げる。
ガチャリ
「ああ。本当に、エルディオも良くなったものだな」
「はい。今日、この子たちのお披露目会ができることを、とても嬉しく思います」
「…そうか。我もだ」
フィオリはサランの腰に手を回し、エスコートするように歩く。
(今日のパーティーでも、フィオリ様はこのようにわたしと歩いてくださるのに、だめです、緊張してしまいます)
ほんのりと桃色に頬が染まるのを自覚する。
とても、嬉しい。何度も上がる口角を必死に抑える。
そんな妻の姿にフィオリは微笑んだ。
他国から大勢の獣族と、ソア国王夫妻が集まる今宵は、
きっとサランも緊張しているだろうと踏んでいたのだが。自分の動作に照れているとは可愛らしいではないか。
(これでサランは良くも悪くも注目を浴びるぞ…)
自分は、この優しく小さな妻を守るだけに。
いや、子どもたちと共に守ることだけを優先しよう。そう心に決めた。
朝食を終わらせ、足早に城内を飾り付ける4人。子どもたちはサランの後ろをてくてくとついて行ったり、レミルを見つければてくてくとついて行ったり、自由である。
「お姫さまーっ、どっちの花瓶が階段の右でしたっけ?」
「えっと、確か、右は…お花の模様が入ってる方です」
「はーい!」
パーティーは夜から。それまでは忙しい。サランは庭師から届けられた花束を抱えていて、一歩先を歩くアーサーが配置した花瓶に生ける係だ。
「…ふぅ、玄関からまた新しい花瓶と花を取りにいきましょう!」
「はいっ」
忙しいがとても楽しい。今頃はフィオリは街の様子を見に行って警備や飾り付けの進行具合を見ているし、レミルは会場の椅子やテーブルの用意をしているだろう。子どもたちはきっとその2人のどちらかに付いて回っている気がする。
「…よいしょ、…ふぅ」
「花瓶は重たいですよね?休憩しますか?」
「いえいえ!なんのその、さあ行きましょう」
「はいっ」
てきぱきと仕事を終えていく2人。そろそろお昼である。
跳ね橋の掃除を担当してくれた庭師にも休憩するように伝えなければ。2人は外へ向かって歩き出す。
「あぁ、まだ昼前ですけど、夜にはたくさん人が集まるのかと思うと、緊張してしまいます、」
「ふふっ、アーサー様もですか?わたしもです」
「俺は獣族に囲まれることが苦手なんです」
「そうなのですか?」
「はい。品定めされているみたいで…みんな身長が高いからそう思うだけなのかなー?と」
うーん、でも、やっぱり見られてる気がするんですよねーとアーサーは考え込んでいる。
(アーサー様も緊張なされるのですね…
それに、わたしよりも背の高いアーサー様が見下ろされるなんて、獣族の方は大柄な方が多いようです)
「アーサー様、今日は共に楽しめると良いですね」
「はい、そうですねお姫さま!」
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