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日が沈む頃。外灯が城までの道をあたたかく灯す。
民のざわめきと馬車がレンガ道を通る音が
自室まで聞こえてきた。
白く柔らかくて、サランの身体のラインに沿った布を身に纏ったサランは鏡越しに全体像を覗く。靴はサンダルのようなデザインのものにしてもらった。
ソア国でよく使われる馴染みのものでもあるし、ガラスや皮などの製品、ヒールのあるものはサランがうまく履きこなせなかったためだ。
純白の衣装に身を包み、サランはそっと目を瞑る。
聞こえてくる、ざわざわとした来賓の声。床を歩く靴の音。遠くからは馬の声。
今日が結婚式。2度目の、正式な。
サランは泣きそうだった。
(こんなに嬉しい、なんて…
本当に、わたしは幸せ者ですね)
思えば王との出会いは酷いもの。
痛くて怖くて。悲しくて。
それなのに、いつからだろう。少しずつ、笑って欲しいと思うようになった。
一度見たあの人の笑顔をもう一度見たくて、けれど捨てられてしまって、子どもを産んだ。
絶望と希望を抱えて目を覚ました時、
「好きだ」と王が言った。
自分も「好きだ」と言った。この時、少し怖かった。
あんなに酷い仕打ちをされても、どうしてこの人に惹かれるのだろうかと。
でも、抱きしめてくれた王の体温が、
嘘じゃないよ。好きだよ。と言っているようで。
少しずつ話しを重ねていけば、
本当は優しくい人だとわかって。
自分の恋心はほんものだったのだと、顔が真っ赤になるくらいちゃんと自覚した。
今、目を開ければ瞳に写るのは花嫁姿の自分。
色んなことがあったけれど、
鏡に映る自分は、今までで1番嬉しい涙を流している。
人前のパーティーは緊張するし、少し怖いけれど。
旦那様への溢れる愛おしい気持ちと
ここにいる、自分が存在している幸福感で
どきどきと胸がなる。
(わたしは、とっても幸せです…)
コンコンとノックが聞こえる。フィオリが迎えにきてくれた。
「サラン、我と行こう」
同じく純白の衣装を身に纏った美しい旦那様に
きっと1番幸せな笑顔で応えられるでしょう。
「はいっ」
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