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あれから数日がたった。
なぜか分からないが、ティラシュアも人になった。
今では子どもたちは二足歩行でお散歩できるまでになっている。
「早すぎませんか?フィオリ様…もしあの子たちの体に大きな負担がかかっているとしたら…そう思うと、とても心苦しいです」
ともに庭を眺める王に寄り添い、サランはうるうると目を濡らす。
その背を支えるようにし、フィオリは何ともなさそうな顔で答える。
「大丈夫だサラン。早すぎるということもない。
それに、もともとティラシュアは火魔法を使えるくらい丈夫に育っていただろう?実際、寝込まなかったしな」
「そうなのですか?たしかにあの子は寝込みませんでしたけど……でもあの子たちは生まれて1年も経っていないのに…」
「獣族は体が強いのが特徴だからな。
……話は変わるのだが…サラン、少し話す時間をくれ」
「?はい」
ふわり
「わっ!?」
「ギャオーー!!」
「キャウーー!!」
フィオリがサランを抱いて空を飛ぶと、気づいた子供たちが驚く。空を飛ぶことに興味津々な我が子の姿に、フィオリはクスリと笑いをこぼした後、3階の自室のベランダまで飛んで見せた。
「2人とも…ふふ」
子どもたちが手足をばたつかせている様子に笑うサランだったが、フィオリの表情を見て静かになる。
「王様…?」
少し、どこか苦しげだと気づいたのだ。
「どうか、されたのですか?」
「…話したいことがある。我の知り合いが、サランの両親を襲った件についてだ。その動機が、出産できる体質のソアの民が欲しかったからだそうだ。本当にすまない…もうあいつは捕らえた。
今後、2度とあのようなことは起こさない。
済まなかった…」
「そう、だったのですね…。
両親も子どもたちも無事でした。もう、過ぎたことでお辛くならないでください。
わたしも、親も、誰もあなたを責めていませんよ」
「…ああ。ありがとう」
抱きしめられ、フィオリがこれまでずっと謝罪したかったのだと分かり、心苦しい思いをさせてしまったことに申し訳なさを感じた。
抱きしめ返すことでサランはフィオリの罪を許す。
しばらくの間抱きしめていれば、フィオリは目線を合わせて問うてきた。
「サランは、武術で子を守っていた。そのことも聞きたいが、我に時間をくれるか?」
「ふふ、もちろんです」
サランはフィオリに、幼少期から習っていた鍛錬があの場で生かされたことを話した。本来は武術というよりも、人を魅了させるための動きだったこと、エルディオの名の由来でもあることを。
「ふむ。…あの時、サランの動きは強かさも…品もあり、しなやかで流れるような身のこなしだった。それは、風をモチーフにしていたのだな。あのような構えなど、初めて見た…今度、誰かと戦う場面ではなくて、サランの舞とやらを見せてくれないか」
「ふふ、ありがとうございます。是非。
清く癒す風という歌の一節に合わせて、決められた型を踊るのです。ソアの民が、幼い頃からみんな習うのですよ」
「王も民も、皆が?」
「はい。あれは、ソアの民の心を表すと言われてきました。強さと美しさはその人の心に宿るものだと。だから、みんなは小さな時から、どのような立ち振る舞いをすべきかを、あの舞から学ぶために習うのです。
もちろん、身体を丈夫にすることも目的ではあるのですが。あの舞は、ソア国ならではの礼儀作法も混じっているのです」
「そうか、良い文化だな」
「はい。ふふ、」
2人での話がとても幸せで、サランはにこにこと、笑顔を向けていた。
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