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「………今はヴァイオリンが恋人かな?」
「顔も良くて、成績優秀でスポーツもできて、ヴァイオリンも弾ける…これだけモテる要素あんのにな…」
本当に口惜しそうな西山くんに僕は苦笑して次の授業の予習を始めた。
「今日は何を作ろうかな」
僕はスーパーで食材とにらめっこをしていた。共働きで忙しい両親に代わり、家事は僕の役目だった。
「今日はシチューにしようかな?」
今日は父さんも母さんも遅いと連絡あったので、作り置きできるシチューを作ることにした。僕はシチューの材料を買って家に戻る。家に戻った僕はシチューを作る、晩ごはんを食べた僕は防音室に篭りヴァイオリンを弾く。今月、ヴァイオリンのコンテストがある。せっかく自分の実力を試せる良い機会だ。練習にも熱が入る。
「最優秀賞おめでとう、陽…良く頑張ったな」
コンテストで最優秀賞を取った僕の頭を父さんが撫でる。父さんに頭を撫でられた僕は思わず顔を綻ばせる。たまたま時間が空いたからと母さんと一緒に僕の演奏を聞きに来てくれた父さん…それだけでも十分嬉しかったが、最優秀賞取れたことを誉めてくれた。ヴァイオリンの練習は苦でもない。むしろ楽しいのでコンテストの結果がどうであれ、それが自分の実力なんだと真摯に受け止めるつもりだった。それがまさか最優秀賞を取れるだなんて夢にも思ってなかったし、父さんがこんなに僕を誉めてくれるなんて思っても見なかった。
「あなた、陽が最優秀賞を取って嬉しいのは分かるけど、こんなところで長話するより、せっかく家族が揃っているんだし、お祝いにどこか美味しいものでも食べに行きましょうよ」
かれこれ10分以上、コンテスト会場の駐車場で僕を誉めている父さんに母さんは呆れながら突っ込む。父さんは母さんの言葉で少し冷静さを取り戻した。
「すまんすまん、陽がこんなに真剣にヴァイオリンに取り込んでいるのが嬉しくてな…つい、我を忘れてしまった」
父さんは腕時計を見て、あごに手を当てた。
「母さんの言う通り、陽の最優秀賞受賞のお祝いにどこか美味しいものを食べに行こう、陽はどこが良い?」
「ええっと…」
父さんにたくさん誉められ満足していた俺は最優秀賞のお祝いにどこか美味しいところを食べに行こうと言われ戸惑う。父さんと母さんはそんな僕を見て肩を竦めた。この時がもっとも幸せだったかもしれない。優しい父さんと母さんに、大好きなヴァイオリン弾いて充実した日々を過ごしていた。
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