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僕は達紀さんにこれから自分の部屋になる2階の部屋に案内される。
「……手狭だけど好きに使ってよ、陽くん」
「あ、ありがとうございます」
僕は母さんの手伝いに向かう達紀さんを見送って、部屋の整理を始める。…と言っても荷物はヴァイオリンと楽譜、服だけだった。幸いまだ春休み中で教科書を買い替える必要がないのは良かった。
こうして新しい義父との生活が始まった。もともと忙しいふたりだけあって家にいること自体が少ない。結局は以前と変わらない生活が続いている。
「そういえば今日から学校だったかしら?」
「うん…」
「独りで大丈夫?」
「近くだし、大丈夫…早く行かないと遅刻するよ」
母さんは時計を確認して血相を変えて仕事に向かった。僕は仕事に向かう母さんを見送って学校に向かう準備をする。
「うーんこんなものかな?」
僕は鏡の前で身なりを整える…亜麻色の髪に日焼けしにくい色白の肌と中性的な顔立ち…あまり男っぽさがないのが最近の悩みだった。支度を済ませた僕は達紀さんの家を出て通い慣れない通学路を歩く。
「では赤城くん、呼んだら中に入ってください」
担任の先生がそう言って教室の中に入って行った。あと1年しかないし、目立たないようにしよう。
「では、赤城くん…入って来てください」
「はい」
僕は教室に入り壇上に上がる。
「赤城 陽です、短い間ですがよろしくお願いします」
僕が自己紹介をすると教室が静まり返る。父さんの苗字に愛着があった僕は母さんにお願いして『赤城』のままでいることになった。
「では1番後ろの席に座ってください」
僕は先生に言われた通りに後ろの席に座った。クラスメイトはこそこそ話ながら僕をこっそり覗き見る。やっぱり黒髪ばっかりのクラスに亜麻色の髪の僕は浮くのだろうか?
「ねぇねぇ赤城くん」
クラスの女子が僕を取り囲む、怒涛の勢いで女子に質問され、僕は気圧される。とりあえず嫌われていないことは分かった。クラスメイトは転校生の僕に優しくしてくれたおかげでそれほど時間を掛けずにクラスに馴染むことができた。
「ねぇ…赤城くん、今日の放課後空いている?」
「ごめん、予定が入ってるんだ…」
数日後…僕はクラスメイトに遊びに誘われたがあらかじめ用事が入っていたから遊びの誘いを申し訳なく断る…今日はヴァイオリンのレッスンが入っているためどうしても外せない。クラスメイトがブーイングに苦笑しながら僕は教室をあとにした。
「よろしくお願いします」
僕は電車に乗って会社の入っているビルが立ち並ぶ大通りに向かい、そこから少し離れた位置にあるビルに入る。
「失礼します」
「いらっしゃい、陽くん」
新しく僕のヴァイオリンを見てくれることになった村上 正臣(ムラカミ マサオミ)さん。僕は早速、正臣さんのレッスンを受けることになった。
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