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「そういえば、陽くんの父親は赤城 浩司先生?」
「そうですけど…?」
正臣さんの口から父さんの名前が出てきて、僕は戸惑う。
「実は俺、大学時代に赤城先生にヴァイオリンを教えてもらっていたんだ」
「…そうなんですか」
正臣さんが父さんの教え子と聞いて僕は意外に世間は狭いと感じた。
僕と母さんが達紀さんと同居を始めて数ヶ月が経った。クラスメイトと仲良くなれ、新しく僕のヴァイオリンを見てくれる講師の正臣さんとは良い関係が築けた。
「うーん、今日は何を作ろうかな?」
僕は楽譜を買うついでに食品コーナーで晩ごはんの買い物をする。ふたりとも忙しいので家事は相変わらず僕の役目だった。幼いころから家事をする習慣がついているため、家事をすることは苦痛ではない。今日は鯖の味噌煮を作ろうと材料を買って家に帰った。
「できた」
僕は鯖の味噌煮を作り、晩ごはんを済ませ、防音室でヴァイオリンの練習をする。最近プロの音楽家とコンサートをする機会が増え、練習に熱が入る。明日の終業式が終われば夏休みに入る、ヴァイオリンに費やせる時間が増やせると僕は今からウキウキだった。
終業式が終わり夏休みが始まった…ヴァイオリンを弾いていると周りが見えなくなる僕は忘れない内に夏休みの宿題を片付けようと、夏休み初日から机にかじりついて夏休みの宿題を片付けていた。その甲斐あって夏休み1週間が過ぎたころにはほとんどの夏休みの宿題を終わらせていた。
「陽か…」
夏休みの宿題に区切りを付け、僕はのどの乾きを感じ、キッチンでアイスコーヒーを作り、部屋に戻ろうとした最中に達紀さんと鉢合わせする。基本的に順風満帆の新生活だが、義父である達紀さんとの距離が計れずにいてギクシャクしてしまっている。達紀さんは僕に視線を向けずに自分の部屋に向かった。
翌日…いつもの時間に起きてリビングに下りるとテーブルの上に灰皿とその灰皿から溢れそうなくらい山盛りのタバコが目に入り、僕は顔をしかめた。母さんはタバコを吸わないため、このタバコは父さんひとりで吸ったものだろう。僕はため息を吐きながらタバコを片付ける、タバコ臭いリビングの窓を開け、タバコの臭いを吸ったカーテンに消臭剤をスプレーする。達紀さんは今スランプ気味で機嫌が悪い。そのせいかタバコを吸う量は以前よりかなり増えている。朝から達紀さんのことでブルーになったせいで食欲が湧かない僕はトーストとベーコンエッグ簡単な食事を済ませる。達紀さんのことは気掛かりだったけど、今日はプロのピアニストと音合わせがある。僕は気持ちを切り換えて、今月末にあるオーケストラに向けて練習を開始した。
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