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「キッチンの掃除終わり…バスルームの掃除もするか」
最近、オーケストラに誘われたり、コンクール本選まで残ったりして充実した夏休みを送っていた。そのせいで少し家事が疎かになってしまい、8月になる前に気になるところを徹底的に掃除している。
「ふう…こんなものか」
とりあえず気になっている箇所をキレイにした僕は額の拭う。その他の場所はまた後日時間が空いた時にして休憩することにした。僕はコーヒー豆をミルで砕き、コーヒーメーカーにセットした。出来立てのコーヒーとプレーンのスコーンを食べる。わざわざ近くに父さんが好きだったコーヒーショップがないか調べた甲斐があった。
色んなコーヒーショップのコーヒーを試したが、やっぱり父さんの好きだったコーヒーショップのコーヒーが僕の舌に合う。スコーンを食べ、コーヒーを飲んでリフレッシュした僕は防音室でヴァイオリンの練習を始める。最近プロの音楽家から伴奏やオーケストラに誘われることが多く、コンクールも全て本選に残っている。僕は元々コミュニケーション能力に乏しく、そのくせに承認欲求だけは人の何倍も強い。そのせいで僕は他人から失望されたり、がっかりされたりするのが嫌いで優等生の仮面を被って本当の自分を隠している。そんな僕が唯一と言って良い、素の自分でいられる時がヴァイオリンを弾いている時だ…だから僕のヴァイオリンを誉められるには素直に嬉しい。まるで本当の自分が認められたと思えるから…。
「陽…か…」
僕が防音室で練習していると達紀さんが防音室に入って来た。達紀さんはヴァイオリンの練習をしている僕を見て露骨に嫌そうな顔をした。
「……ど、どうしたんですか?」
「………取り忘れていた楽譜を取りに来ただけだ」
達紀さんはうんざりした顔で本棚に置かれている楽譜を漁る。僕は視線を達紀さんから楽譜に移し、練習を再開する。
「……まだ、何かあるんですか?」
僕が一曲弾き終えるとずっと僕を凝視している達紀さんに気付いた。
「両親から受け継いだ才能に恵まれた環境か…羨ましいな」
達紀さんは足音を立てず、ゆっくりと僕に近付く。
「顔も良いし、学校ではさぞやモテてるんだろう」
達紀さんのタールようなどろりっとした嫉妬に僕は動けなくなる。いったい僕の何が達紀さんの琴線に触れたのかわからない。
「マジでムカつく!!」
達紀さんは拳を握り締めるとそれを僕の鳩尾に深く撃ち込んだ。達紀さんのいきなりの暴挙に僕は目を瞠った。お腹を押さえその場に崩れ落ちる僕の肩を掴み、何度も鳩尾に拳を撃ち込む
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