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思慕
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朝、6時少し前。
いつもなら、閉じられたカーテンの隙間から朝日が漏れている頃だが、何となく今日は薄暗い。
目を擦りながらカーテンを払うと、窓ガラスには小さな水滴が、僅かな朝日に照らされながらそこにあった。
夜の間に一雨来たんだろう、念の為、リュックに折り畳み傘を忍ばせておいた。
ベッドから立ち上がり、適当に朝御飯を済ませ、寝癖を直し、制服に着替え、いつもの時間に部屋を出た。
灰色の空から降りてきた、湿気を帯びた生温い風が、嫌に優しく俺の頬を撫でる。
俺は、ジメジメと身体に纒わり付いてくるその感覚を取り払う様に、アパートの階段を駆け下りた。
ピンポ--ン......
昨日とほぼ同じ時間に、京介の部屋のインターホンを鳴らす。
しばらくして、部屋からドタドタと駆け回る音が聞こえてきたと思ったら、大きな音と共に扉が開いた。
扉が開いたそこには、扉とは対照的な、眠た気な京介が立っていた。
たった今着替えたのだろう。髪の毛は、寝癖で所々跳ねていた。
「...はよ...ごめん、ねぼーした」
「いいよ、いつもの事だし」
悟られない様に、精一杯、やれやれ、といった顔を作る。
その様子に、京介は力無くへにゃっと笑った。
それだけで、また胸がじわじわと熱くなってくる。
本当、乙女かよ俺は...。
しばらくそんな事を考えていたら、いくぞー、と京介に唆された。
ハッとして、先に行ってしまっていた彼の背中を急いで追いかける。
「今日体育だりー。新太ある?」
「ないけど、あれあるぜ。数学」
「うわキツ!そういや課題終わってないわ」
「俺も。やんなきゃな」
その後も、何気無い会話をしながら、駅までの道程を何とか乗り切る。
電車に乗ってからは、俺は課題消費に勤しみ、京介は音楽を聴きながら寝ていた。
降車後も少しの距離歩き、校門が見えて来た所で、あの声が聞こえて来た。
「井澤〜、唯川〜〜!はよーー!!」
「おはよ」
「はよー崎坂、朝からテンション高っ!」
崎坂は、笑顔で自転車を走らせて、勢い良く此方へ向かって来た。
俺等の横に並ぶと、自転車から降り歩き始める。
崎坂とは、いつもこの時間に、校門近くで出会す。此処からは3人で、談笑しながら教室に向かう。
京介と崎坂は同じ、2組のクラスの教室へ入っていく。
別れ際に、また、と手を振った。
俺は直ぐ隣の3組の教室へ入る。
数人から投げ掛けられる挨拶に応じながら席に着き、荷物を取り出す。
今日も、彼と友達でいられるように、頑張らなければ。
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