アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
Vivre dans la révolution~革命に生きて
首飾り事件
-
王妃マリー・アントワネットのイメージを傷つける決定的な出来事。
そう、『首飾り事件』。
自称、ヴァロア王家の血を引くラ・モット伯爵夫人を名乗る女山師が起こした詐欺事件。
パリで相棒の宝石工・バッサンジュと共に宝石商を営んでいた、ベーマーという男がいた。
彼は王室に出入りする、宮廷御用達宝石商として、マリー・アントワネットに宝石を売っていた人物である。
マリーは宝石が好きで、ルイ16世から許可を貰ってまで購入していたほど。
『国王陛下。レオナールが考案してくださった髪形やドレスのためにも、宝石が必要だと思います。どうしても欲しいのがございます』
しかし、悪趣味の宝石に関しては、国王からの待ったがあったのだが。
「王妃、止めたほうが無難だ」
ベーマーはルイ15世の寵姫デュ・バリー夫人が購入してくれることを予想して、1774年頃、豪華な首飾りの製作開始。しかし、買ってくれることを予想していたデュ・バリー夫人が、ルイ15世の崩御に伴い、没落。その矛先は、マリー・アントワネットへと向けられることになった。
ダイヤが540粒使われていて、一番新しいものでも3000年以上前の物を使っていて、ベーマーが八方手を尽くして1粒1粒を探し求め、バッサンジュが丹念に研磨して細工を施した、とんでもない値打ちもの。
ほぼ完成していて、現在の金額で数十億円という首飾りを買えるのは、マリー・アントワネットしかいないと考えていた。この首飾りを集めるために、莫大な借金をしていたベーマーは売り込みに焦っていた。
しかし、マリーにとって高額であったことと、苦手だったデュ・バリー夫人のために作られたものであることから購入を躊躇した。
「これはわたくしの趣味ではない。高価すぎる」
「やめたほうが無難だ」
ルイ16世から改めて待ったをかけられたマリー=アントワネット。
そこでベーマーは王妃と親しいと称するラ・モット伯爵夫人に仲介を依頼した。
この女こそ、ラ・モット伯爵夫人。首飾りの詐欺の首謀者。1785年1月、伯爵夫人はロアン枢機卿にマリー・アントワネットの要望として首飾りの代理購入を持ちかけた。
「わたくし、こちらはキャンセルをしたはずです。ムッシュ・ベーマー、お引き取り願いたいのですが」
ロアン枢機卿は、名家の産まれ・育ち。
「王妃様と親しくなって、パリやヴェルサイユで派手な暮らしをしたい」
カトリックの司教の立場でありながら、贅沢を好んでいた。
美食家、女癖が半端でないほど悪い。聖職者は名ばかりの見せかけそのもの。そんなこともあり、マリーの母であるマリア・テレジアから反感を買ったのは言うまでもない。
ロアン枢機卿はひょんなことから、ある女性と親しくなっていた。ラ・モット伯爵夫人、という貧しい産まれの、旧ヴァロア家の血を引いている、と周囲に言いふらして、宮廷に出入りしていた。
ロアンはその伝手を使い、出世を狙っていたのだ。
******
「ロアン大司教様、贅沢司教として有名だ」
ディディエがカトリックオラトリオ付属学校に入学したての頃。
リンゴをかじりながら、幼馴染のギョームたちと噂話を繰り広げていく。
「本当に」
「何、それ?の話だ」
ロアンにとって好都合だった。生活拠点はフランス・パリだったため。
伯爵夫人は、前年の夏、娼婦マリー・ニコル・ルゲイ・デシニーを王妃の替え玉に仕立て、ロアン枢機卿と面会させており、彼は念願の王妃との謁見を叶えてくれた人物として、伯爵夫人を完全に信用していた。首飾りを代理購入しラ・モット伯爵夫人に首飾りを渡した。ロアン大司教は罠にはまった。
「ロアン枢機卿様は、残念ながら、身から出た錆びであろう」
ジャン=フランソワとクレリーが言う。
その後首飾りはバラバラにされてジャンヌの夫であるラ・モット伯爵(及び計画の加担者達)によりロンドンで売られた。しばらくして首飾りの代金が支払われないことに業を煮やしたベーマーが、王妃の側近に面会して問い質した事により事件が発覚。
「はめられた!」
マリーは自分がはめられた、とルイ16世たちに訴えた。
とても、屈辱的のほかでもない。
「徹底的にロアンたちを尋問して!見せしめのために!」
同年8月、ロアン大司教、ラ・モット伯爵夫人、ニコル・ドリヴァは逮捕された。
事件に激昂したマリーは、パリ高等法院(最高司法機関)に裁判を持ちこんだ。1786年5月に判決が下され、ロアン枢機卿はカリオストロ伯爵夫妻、ニコル・ドリヴァとともに無罪となり、ラ・モット伯爵夫人は終身刑に処せられた。
ブルボン王朝末期を象徴する世紀のスキャンダルは、マリーの顔に泥を塗ることになった。
「公正な裁判をしたんだろうな!?」
国王夫婦の忠実な側近のジャン=フランソワ・デシャンはかなり、憤慨していた。
******
「自業自得じゃないのか?」
「我々をないがしろにしたその代償よね」
パリじゅうでは、マリーに同情する人々はほとんどといっていなかった。
******
作者yunaより。
世紀のスキャンダルと言われた「首飾り事件」。
ロアン大司教は、カトリックの司教の立場にいながら、美食や狩猟といった贅沢を好んでいたようです。
それが原因で、厳格なマリア・テレジアから嫌悪されたそうです。
その首飾りは、マリーにとって悪趣味で非常に高価すぎます。
そう、マリーの生涯・大の苦手だったデュ=バリー夫人のために作られたものでもあったのです。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
16 / 71