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Vivre dans la révolution~革命に生きて
ヴァレンヌの逃亡
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翌日、ティエリがディディエに続けとばかりに訪問してきた。
国王一家の診療と健康管理。
「流石はティエリだ。誠実に診察をしてくれる」
しかし・・・
「なんだって?ミラボーが亡くなったのか!?」
王室の尊厳が守られるように助言してきたミラボーが1791年4月2日、急死した。
王室一家の唯一の味方だった。最早、味方は誰一人いない、といっていいだろう。
「ミラボーさんのことは気の毒でした・・・」
フェルセンがパリのチュイルリー宮殿にやってきた。
開口早々、フェルセンからオーストリアへの逃亡を提言してきた。
「国民を見捨てることはしたくない」
国王は乗り気ではない。
「わたしもそれは同じ気持ちです。だけど・・・このまま、パリにいるのはとても危険です。フェルセン侯爵の話に乗りましょう」
マリーも同様だった。
「フェルセン。頼んだぞ」
計画は6月19日に決行される予定であった。
しかし、どのように、実行すべきか、フェルセンとジャン=ミシェルたちは話し合っていた。
色々と討論し合っていた。
「二つの馬車を使ったほうがいい。疑惑をそらすためだ」
しかし、生憎、馬車が一台故障していた。
「どうにかならないのものでしょうか・・・?」
「悩んでいても仕方ない」
取りあえず、豪奢な大きい馬車を使う羽目になった。どうにもなりそうにないだろう。
ドイツ製の広い馬車。
6月20日の深夜。
国王一家は、パリを出た。まずは、国境近くのモンメディをめざす。
偽造通行証、逃亡に向けた食糧、衣類を用意。そして、重要な護衛兵の選出。
そして、いざ、出発。
国王たちは、ロシア貴族のコルフ夫人一行になりすました。フェルセンは馬車の御者に。
国王、マリー、マリー=テレーズ王女、ルイ=シャルル王太子、エリザベート内親王、フェルセン侯爵、そして、ジャン=ミシェル・デシャン。
パリ郊外に出たとき、馬車の乗り換えがあった。そこで、フェルセン侯爵とジャン=ミシェルと別れることになった。
6月21日、二時半。パリ市街北東部・ボンディに。
「フェルセン、ジャン=ミシェル。そなたがたはここまででよい」
「しかし・・・陛下・・・」
「フェルセン・・おまえはよくやってくれた。自身の危険も顧みることなく、我々に力を貸してくれたこと、決して忘れない」
そして、マリーたちは、ドイツ製の豪奢な馬車に乗り込んだ。
豪奢な馬車はただでさえ重く、遅いもの。
マリーたちは、食器、食糧、ワイン一升(国王はタダでさえ喉が渇きやすかった)を馬車に持ち込んだから、とても危険な逃亡だった。
フェルセンとは今宵最後の別れだった。そして、国王一家は、破滅の道へ進んでいった。
途中、馬が転倒したり、車輪が外れるなどのトラブルに巻き込まれたりしていた。
「王妃様・・・」
「フェルセン・・・」
一方、パリでは・・・
チュイルリー宮殿の寝室。
朝7時のこと。
従僕が国王一家がいないのを発見した。
一行が遅れてヴァレンヌに到着する16時間前のこと。
無論、国王が行方不明、ということが世間に広め渡ったのだ。
ラファイエット、デシャン、クレリーは
「国王一家は、誘拐されたようです!」
国王一家は国民を裏切ったりしない、と断言。
ラファイエットは、国王の無実を信じていた。
ジャコバンクラブでは、マクシミリアン・ロベスピエールとダントンはラファイエットをそのことを叱責した。
「ロベスピエールさん!国王一家はご逃亡されたの、本当なのでしょうか?」
ディディエは息を切らしながら、飛んで来た。
ルイ16世一家が逃亡したなんて、信じられない。国民を見捨てるような卑怯なことはなさるわけがない。
「ディディエ?」
「なにかの間違いであってほしい!」
「・・・ディディエ、これは・・・事実なんだ・・・」
ディディエは全身の力が抜けたような感じがした。
国民たちは、国王の裏切りをそのとき、知ったのだ。
当然、ルイ16世紀の胸像を取り壊したり、宮殿を荒らす、あるものは、理性を失い、国王の名前の看板商品を著しく傷つけたり、怒り心頭だった。
ディディエたちは国王の裏切りとは信じたくない気分だった。
悪夢なら目覚めてほしい。
「デシャン先生、クレリーさん・・・」
「大丈夫だ、ディディエ。きっと、ご無事でいらっしゃる」
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