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Vivre dans la révolution~革命に生きて
天使になったルイ
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処刑前のこと・・・
長髪がちだったルイは、髪の毛をうなじのところまで乱暴に着られた。
処刑の妨げにならないようにするためであった。
「・・・ディディエに渡してくれ・・・」
ルイは左耳のピアスと自身の頭髪と遺言をポール・バラスに託(ことづけ)をした。
そして、28日・・・
「ルイ・アントワーヌ・レオン・ド・サン=ジュスト」
アンリ・サンソンによって、フルネームで自分の名前で呼ばれたルイは、堂々たる態度でギロチン台へとのぼっていった。
長身の映画・舞台俳優のごとくだった。
「Adieu...」
ルイは力なく言い残していた。
「こんな天使のような顔をしておきながら、殺戮に手を染めたのか!?」
「顔に似合わず、政敵である学生と関係を持っていたんだろう!?」
民衆はざわめいた。ルイは最早、それに気を取られる暇はない。
ディディエと過ごした時間が走馬灯のごとく思い出しては消えていった・・・
カトリックオラトリオ付属学校時代は教育実習生と教え子の関係に始まった二人は、敵同士になろうとは想像もつかなかった・・・しかし、運命のいたずらのように、二人は惹かれあった。
「・・・ピエール・・・今から、そっちに行く・・・ディディエ・・・未来のフランスを担っていってくれ・・・」
「Adeiu,Didier」
ルイは夕刻の空を眺めていた・・・
「頼む、ムッシュ・サンソン」
ルイは自ら、身をサンソンに委ねた・・・
ジャコバン党の22名は全員処刑。2日間に渡って108名が粛清された。
なお、ジャン=バティスト・カリエやフーキエ=タンヴィルらジャコバン党は、生き残りはその後同年から翌年にかけて逮捕・処刑された。
血の革命は終わった・・・
「ディディエ!?」
「無事でよかったよ」
ギョームは開口早々、ディディエに駆け寄った。
7月28日の夜・・・ピストルの音がルイたちの刑死の知らせを告げた。
ディディエは味わっていた恐怖感のため、悲しみもなかった。
フーシェたちから容赦ない凌辱を受けていたから。
「ディディエ・・・ルイからの遺書だ・・・」
ディディエは早速、ルイからの手紙を開いた。
「罪人として処刑されるのではない。俺も権力争いに負けただけであって、決して恥じ入るものではない。ディディエの人生はこれからだ。どんなことがあっても、一生懸命生きて、フランスを立て直していってほしいんだ・・・」
ディディエは緊張の糸が切れたか、のように、涙があふれ出てきた・・・
かけがえのない人生であったことを初めて知った。
「ルイ・・・」
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