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冷たさと温もり。7
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笹倉side
棚木くんの忘れ物を届けに行くと、部屋の鍵が開いていた。
何かあったのかと部屋に入ると棚木くんがひとりで泣いていた。
その姿に俺は胸が苦しくなった。
棚木くんを泣かせる原因はなんなんだろうか。
それは考えるとおおよその検討はつく。
気づいたら俺は棚木くんを抱きしめていた。
彼は必死に涙を隠そうとしていた。
また胸がチクリと痛む。
俺に頼ってほしい。俺の前では泣いてほしい。
そんな感情が自分の中で湧き上がる。
そしてこの感覚には覚えがあった。
……あぁ。どうやら俺は棚木くんが好きらしい。
仕事仲間としてじゃなく、恋愛対象として。
ご飯を食べていると棚木くんが同情してるなら帰れと言ってきた。
俺はまだまだ彼からの信用は得られてないらしい。
一つ一つ彼の不安を無くすように言葉を紡いでいく。
でもこれは俺の本心だ。
最後に棚木くんのことが好きだと言った。
たとえこの恋が報われなくても、彼の心のよりどころにでもなれればそれでいい、そう思っていた。
でも彼は俺のことを好きだと言った。
きっとそれは仕事仲間としてということだろう。
……でも、嫌われていないのならば最初から諦めるんじゃなくて自分から攻めて行ってもいいのかもしれない。
いつも逃げてばかりじゃ本当に欲しいものは、手に入らない。
そして俺は、棚木くんを必ず落としてみせると心の中で宣言した。
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