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過去の出来事。
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笹倉side
「もしかして今日誘ったのってそれが聞きたかったから?」
その言葉を言う時の棚木くんの声色は普段とは明らかに違っていた。
それは何というか、いつもより冷たくて触れられてほしくないと言っているように感じた。
棚木くん自身も無意識だったようで、ハッとした後どこか不安げな表情を浮かべていた。
「変なこと聞いてごめん。
…でも俺はそんなつもりで棚木くんを誘ったわけじゃないってことは分かってほしい。」
「…そこは、わかってる。俺こそ酷い言い方した。ごめん。」
俺に何度も謝る棚木くんの姿に、俺は地雷を踏んでしまったことに今更気づく。
棚木くんの抱えているものは、思っていたよりも重たい…。
直感的にそう感じた。
「…颯斗さん。」
俯いたまま棚木くんが弱々しく俺の名前を呼んだ。
「…ん?」
「今から俺の家行きませんか。」
「別にいいけど――」
なんで?と聞く前に答えが返ってきた。
「昔話を少しだけ、聞いてほしい…」
きっとこれは棚木くんの昔話のこと。
俺が聞いてもいいのだろうか。と思ったけど今の棚木くんを助けてやれることができるのは俺しかいない。
「うん。聞かせて。その昔話。」
「面白くないかもしれないけど…。」
「大丈夫。それでも俺は聞きたい。」
俺の言葉を聞いて少しだけ棚木くんに安堵の表情が見えた。
出会ってまだ数か月しか経っていない俺のことを信用してくれている棚木くんのように、俺も彼を信じて少しでも力になってあげたい。
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