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過去の出来事。3
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実家に居たころは息苦しくて、大学は一人暮らしが必要なくらいの距離があるところを選んだ。
俺には何でもできる完璧な兄さんと俺のことを慕ってくれていた弟がいる。
親父は日本有数の大手企業TNGホールディングスの代表取締役社長を務めているため、その息子である俺たちは跡取りとして行儀作法やらを厳しく教えられて育ってきた。
その中でも兄の浩太《こうた》は顔もよく勉強も運動も完璧にこなしていた。
俺と弟の翔真《しょうま》はそんな兄さんと比べられながらも必死に兄さんのようになろうと努力した。
"お前のような平凡な人間は、棚木家の恥だ。
もっと浩太を見習って少しは勉強したらどうだ。"
親父には中学に入ってからこんな言葉を数えきれないほど言われた。
たとえ学校のテストで上位をとっても、「それが当たり前だ。」というような態度をとられるため、親父から褒められたことなど俺の記憶上一度もない。
高校に入ってからはそんな生活にうんざりしてあまり勉強をしなくなった。
その時期くらいから親父は俺に対して諦めを感じていたみたいだ。
修は浩太のようにはなれないと。
”修、お前はせめて棚木家に泥を塗らないように生きろ。
最低限大学には行け。
高卒で就職などと甘えたことを考えるなよ。
まったく…ただでさえ浩太には及ばないというのに…。”
お前は必要ないと言われているのと同じだった。
悔しかった。
どうあがいても兄のようにはなれないと思い知らされるのが。
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