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誤解
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「……いない」
原因がどこにあるかわからないが、俺の行動で賢二郎を泣かせてしまったことは確かだ。取り敢えず風呂に入って時間を開け、それで謝ろうと部屋まで来たのだが。
ノックしても出ない扉を開けると、中は薄暗くもぬけの殻。風呂の時間もそろそろ終わる。
「悪い」
一言誰もいない部屋に謝ってから、部屋の明かりをつけた。
1度あたりを見回し、片付いた部屋に風呂に使う道具がないことを確認する。それから棚を開けると、洗濯に出す直前だったのかタオルは何も無く、代わりにカゴに使用済みと見える物が入れてあった。それからすぐ目をそらし、部屋の電気を消して寮の外へ行く。
恐らく外へ行ったのだろう。友人の家か、銭湯か。
まず近場の銭湯へ。
◆ ◇ ◆
「……はは」
賢二郎は見つけた。だが、見たくないシチュエーションだ。
「瀬見さんはいいのかよ」
瀬見さんに何か話されながら頭を撫でられ、顔を赤くして何か言い返している賢二郎が見えた。
振り払われたのは、突き飛ばされたのは、こういうことなんだろう。
あいつは牛島さんが好きなわけじゃなかった。
恐らくさっきの涙は瀬見さん以外に至近距離で触れられたのがいやだったのだろう。
瀬見さんはもとよりそこそこ距離は近かったが、顔を赤くしているのに気づかない人ではないだろう。
「……2人で仲良くお風呂ってか。不健全だな」
何故かは、わからない。ただ無性にイラついて、今出て瀬見さんの腕を振り払いたい。
暗がりでもわかるほど耳まで真っ赤にした幸せそう顔が、心臓をえぐる。
__あ、なんか、だめだ
原因はわからない。ただ無性にイラついて。
けど、賢二郎の笑顔を崩したくなくて。
ひっそりとそこを後にした。
◇ ◆ ◇
瀬見さんと別れてから部屋に入ろうとすると、鍵を閉め忘れているのに気づいた。
太一のことで慌てすぎた。少し落ち着いて、明日早めに謝ろう。
「え」
そう思った矢先、いつもと違う匂いがした。
誰かが部屋にはいってきたのだろうか。
いや、でも、これは、この匂いは知っている。
「太一……?」
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