アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
070.伊澄編end
-
しばらく屋上で無言のままただ抱き合って座っていた。
慶の腕はあったかくてなんだか落ち着いた。
俺は慶に“好き”って言った。
本音なんだ、きっと。
心の底から想った言葉なんだ。
自分の口で好きと伝えるのは人生で初めてかもしれない。
幼稚園の頃好きだった女の子にも告白せずに卒園したからな…。
俺はなんで慶が好きなんだろうって考えてみた。
はっきりとした答えは浮かばなかった。
ただ好きなんだ。大切なんだ。それだけ。
慶は昔の俺も今の俺も優しく受け止めてくれた。嬉しかった。
いつの間にか昼休みも終わって、授業開始のチャイムが鳴った。
サボっちゃったか……
「伊澄、」
耳元で慶の声がした。
「ん。」
それに俺は短く応える。
「好き。俺と付き合って。」
俺の肩を抱いた慶の腕の力が少しだけ強くなった様に感じた。
静まり返って風の音しかしない静かな屋上で、透き通った慶の声だけが俺の耳に入る。
嬉しかった。
けど不安だ。
俺でいいのか、俺はお前とは釣り合わないんじゃないのか、そもそも男同士だし、
慶は俺でいいのか、
不安要素がいっぱい。
「ちがうよ。伊澄でいい、じゃない。
伊澄“が”いいの。ってか伊澄じゃなきゃ嫌なの。」
またおれの心の中を察したな…?
ははは、一本取られたよ。
上手いこと言ってくれるなぁ一休さん。
「そ、そんなに言うなら、つ、付き合ってやってもいぃし…?」
素直になれなかった。
いつもの俺だ。
「ははは、いつもの伊澄だ。」
それでいい。
素直になれたらいくらでも好きって言ってあげる。
伊澄編end
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
70 / 82