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便利屋と熊【1】
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俺の長年の相棒、K2。アサルトライフルの1種でなかなか使い勝手の良い銃だ。
そのK2は、今エリックの手の中で大人しくメンテナンスされている。
エリックのでっかい手が、器用に動いて銃を分解していく。
俺は毎週、エリックの店で武器のメンテナンスをしてもらうのが習慣になっていた。
「……」
俺はエリックの作業を、頬杖をついて眺めていた。俺はエリックが仕事してるのを見るのが好きだ。いや…勿論、エリック本人も…好き…だけどな…?
黙ってエリックの作業が終わるのを待っていると、人の気配を感じて店の入口に目を向ける。癖のある金髪が反り返った帽子からはみ出て、健康的に焼けた肌が印象的な男が立っていた。
「やぁ、エリック」
男の声に反応して、エリックが顔を上げる。
「おぉ!ビリーじゃないか!久しぶりだな」
「あぁ、ようやく仕事が一段落ついてよ」
ビリーと呼ばれた男の指には指輪があった。
「仕事の最中に、デザートイーグルが弾詰まりを起こしてダメになっちまって。新調しようかってな」
「そうか、ちょうど良いのが入ってるぞ」
そう言って、エリックは奥の棚へ歩いていった。
男は、気がついたように俺に目を向けると、気さくに笑った。
「邪魔して、悪かったね」
「…?邪魔なんかしてねぇよ。お前、客でこの店来てんじゃん」
「…それもそうだな!」
少し会話しただけで理解出来た。こいつ、かなり強い。本能で、そう感じとった。
「お!K2じゃねぇか」
「俺の相棒」
「そうか。道理で使い込まれてる訳だ」
「……」
今まで、俺がこの店にいるのを見た大人は馬鹿にするかアルバイトと間違うかのどちらかで、俺がアサルトライフルだのハンドガンだのを使って仕事をしてると気づいた奴はいなかった。
…まあ、こいつのこと嫌いじゃねぇ。
「俺はビリーって呼ばれるもんだ。君は?」
「…獏だ。便利屋やってる」
「あの噂の便利屋か!」
「…噂…?」
俺が聞き返すと、ビリーはニヤリと笑った。
そこへエリックがデザートイーグルを持って戻ってきた。
「どうだ?前のやつと比べて少し重いが…装填数が増えてるぞ」
「ふーん、なるほどね。…試し撃ちしてもいいか?」
「勿論だ」
エリックの店には小さいが狙撃場もある。そこで試し撃ちをすることが可能だ。
「獏、ビリーは凄いぞ!今まで的のド真ん中を外したことがねぇからな!」
「お世辞でも嬉しいよ、エリック」
「お世辞なんかじゃねぇよ!あんなに惚れ惚れする狙撃の腕はお前ぐらいさ」
エリックがキラキラと目を輝かせてる。見たことねぇ、憧れも含まれた笑顔。
俺はわざと大きな音を立てて立ち上がった。
「俺も試し撃ち」
「…試し撃ち?獏もするのか?何で?」
俺がエリックを無視して狙撃場に歩くのを見て、ビリーはニヤニヤと笑いながら言った。
「分かってねぇなぁ!エリックは」
あぁ、ほんと、分かってねぇよな。
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