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初めまして
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今、唯が立っているのはとても大きな屋敷の前。
眩しいくらいに真っ白な壁に赤い屋根、その家を守るようにそびえ立つ鉄格子の門が唯を中に入れさせまいとしているようだった。
何故、唯がこの場所に居るのかというと、再婚する父親が再婚相手との生活に唯が邪魔になるため田舎にあるこの別荘へと移されたのだ。
父親の口から直接言われた訳ではないが、自分に向けられるあの冷たい目を思い出せば自分がもう、父親に必要とされていないことは解っていた。
迎えの車に乗り、この屋敷の前に降ろされたのは良いが。唯はこの後どうしたら良いのかがわからず暫く門の前に立ち尽くしていた。
「……ここ、で合ってるよね?」
「さようですよ」
「わっ!?」
不安に駆られた唯がぽつりと呟けば、突然後ろから声をかけられて思わず飛び上がった。
慌てて背後を振り返ると、そこには三十代後半から四十前半くらいの男性が笑みを浮かべて立っていた。
「申し訳ありません。お出迎えが遅くなりました。私は古谷と申します」
「あ、はい。僕は今日からこちらでお世話になります、朝霧 唯です」
「旦那様から承っております。長旅でお疲れでしょう。中へどうぞ」
古谷と名乗るその男性は、今日から屋敷に住む唯の身の回りの世話をしてくれる人で、古谷は唯に深々とお辞儀をすると唯を屋敷の中へと招き入れた。
「こちらが今日から唯様のお部屋でございます。私は下の階の部屋に居りますのでなにか御用があればお申し付けください」
「あ、はい…ありがとうございます」
唯を部屋まで案内した古谷は一礼すると下の階へと降りていった。
案内された部屋は一人部屋にしては随分と広く、唯の持ってきた荷物を運び入れても場所が余るくらいに広かった。
唯はとりあえず荷物を部屋の隅に置き、部屋全体をぐるりと見回してみる。
部屋の中はほとんど真っ白な空間で、当たり前だが人が生活していたような雰囲気はない。
唯は入ってすぐ右側に付けられた窓の側へと近づくと、扉を開けた。
外を見渡してはじめに見えたのは先程くぐって来た門と、綺麗に整えられた庭だった。
そしてそこにはいつの間に庭へ出たのか、古谷が花の手入れをしていた様で、窓を開けた唯に気づきぺこりと一礼した。
慌てて唯も頭を下げるとそのまま部屋の中へ引っ込んだ。
人に頭を下げられることに慣れていないので、心臓が少しどきどきする。
(……これから此処でやって行けるのかな)
一抹の不安が唯の頭をよぎるが、それを消すように首を左右に振った。
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