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9 小さな幸せ -1-
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不機嫌な俺をチラチラと見る涼ちゃん。
「ねぇ涼ちゃん。珍しく起きてるならこっち見てないで、話聞いたら?」
「いや……そうしたいけど、お前が不機嫌なのは珍しいなって」
「俺だって不機嫌な時だってあるよ」
「不機嫌さがいつも以上だから、正直驚いてる」
そりゃあそうか……いつもの俺のキャラは明るくキャッキャしているような感じだもんな。
でもそんな心の余裕なんかない。翔空に抱かれた後から誰ともヤってないし、寝不足だし、発情しないし。
発情しないのは良いんだけど、ふとした瞬間に翔空のこと思い出してまた眠れなくなるからイヤだ。
睡眠薬もらって飲むけど正直飲みたくないし。
「……気にしなくていいよ。寝てないだけだから」
「本当にそれだけか?」
「うん、それだけ」
それだけじゃないけど、迷惑かけたくないし……
「話があるように見えたけど、ないならいい。でも話したくなったら聞いてやってもいい」
「何その上から目線。ムカつく」
「ムカついておけ。溜め込まれるよりはマシだ」
「ムカつく」
「ムカつけ」
「ムカァ!!」
2人でくだらないことばかり話していると。
「そこ、うるさい」
授業中だということを忘れていたため、先生に叱られてしまった。
俺たちは顔を見合わせてクスッと笑った。
さっきまでの怒りはどこかへ消え去り、寝不足だったことも忘れるくらい授業が終わった後に涼ちゃんとくだらない会話をして大学を出た。
今日も伊織先生の診療所へ行った。
「昨日は眠れた?」
「少しだけですけど……」
「でも顔色は良いみたいね。何か良いことでもあった?」
「幼なじみとくだらない話をしてきただけです。おかげでちょっと気が紛れました」
「そう、それなら良かった。でも寝不足なのは辛くない?」
「何とかなりません?」
「そうねぇ……」
伊織先生がうーんと考えていると、『失礼します』と人が入ってきた。
「あら、空ちゃん」
「純佑様から伊織先生のところに行けと言われまして参りました。待った方がよろしいですか?」
入ってきたのは清水さんの世話人、染谷さんだった。
確かこの人も俺と同じ……
「あ、いえ。俺は先生と話をしにきただけだから。どうぞ」
「…ありがとうございます。では先に失礼して……」
この人がいるってことは清水さんもいるのかな……
「染谷さん、今日は清水さんいるんですか?」
「車で待機するとおっしゃられたので、車の方に」
「そうなんだ……」
何か少しショック……染谷さんがここに来るなら一緒に来ればいいのに……
会いたい、会いたいなぁ……清水さんに。でも車から出てこないのはもしかしたら俺に会いたくないからりして……
けど、会いたい。そう思った瞬間、体が動いて気づいたら俺は清水さんのらしき車の前に立っていた。
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