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「じゃあ1つだけ聞く。こいつは、市川梓は染谷と同じか?」
フェロモンで人を誘う……
そんな珍しい体質なのか、病気なのかはわからないが。染谷だけだと思っていた。
男にだけ反応する体。もしそれなら……
「…」
こいつと同じように悩んでいるかも……
…って何、感情移入しそうになっているんだ。こいつは先生の息子。それ以上に何があるんだ。
「彼に関しては何も言えない。でも仮に友達の話とすれば、話は別」
「話す気になったか?」
「患者の話ではない。今から話すのは友達の話。それならいいでしょ?」
「…悪い医者だな。でも感謝はする」
「純ちゃんにではなくて、先生にってことで話すだけ」
伊織は仮の友達『市川梓』について話してくれた。
市川梓は何らかのフェロモンや匂いを感じると発情する体質を持っている。何が原因なのかは不明だが、高校の頃から悩まされていたという。
好きでもない人と寝る。気になる人がいたとしても、こんな体を受け入れる人なんかいない。
受け入れたとしてもどうせ離れていく。
市川梓は昔から薬が効きにくい体質なのか、抑制剤を飲んでも治まらないときが多々あるらしい。だからなのか次第に諦めるようになった。
この体で恋はできないんだと。
「昨日も来たんだけど、やっぱり症状が空ちゃんとほぼ同じ。違うところは梓くんの方が抑制剤の強さが空ちゃんよりも強いこと。
だから彼の体には負担がかかりすぎてるかもね。本当は良くないんだけど、彼自身辛いみたいで」
俺にはその辛さはわからない。自分が発情して男に盛るわけではないし。
でも。
「興味を持った」
「・・・え?」
なぜか興味をある。染谷と同じ体質だからだろうか。理由なんてわからない。
それ以上に俺は知りたいと思った。こいつはどうやって人を誘うのか。
俺がこいつの誘いに乗り、抱いたら俺自身どうなるのか。他の男たちと同じように寝るのか。
もしこいつを俺のものにしたら……
「…抱いたぐらいで惚れるわけないか……」
「え、えーと…純ちゃん、何言ってるの?『興味を持った』?もしかしてこの子のこと……」
「好きになるわけない。出会ったこともない、写真でしか、資料でしか知らない男のことなんか」
そうだ。興味を持っただけで好きとは全然違う。
でもなぜか伊織はニヤついていて。
「ウフフ、これはこれは…なんか面白そうな展開になってくるぞ~!」
「意味わからん。俺はそろそろ仕事に戻る。行くぞ、染谷」
「あ、待って!空ちゃんは今のところ大丈夫?抑制剤は効いてる?」
「今のところは安定しています。また何かあったら伺います」
「了解!純ちゃん、ガンバ!」
何が『ガンバ』だ。伊織は何か勘違いしているようだが、ガキには興味ない。ガキは嫌いだ。
俺は診療所を出て、家に帰り残った仕事を済ませた。
「ふぅ……」
仕事が終わった後、もう一度『市川梓』の資料を見る。
こんなガキに大人の男はフェロモンによって誘惑される。全然想像つかない。
もし仮に俺が男どもと同じように誘惑され、我を失ってまでこの男を抱くとなることになったら、俺はどんな風になるんだろう。
気づけば俺は先生から依頼されてからずっと『市川梓』のことを考えていた。
でもそのことに自分自身気付かなかった。
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