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何の話をしていたのかは正確にはわからない。けど何かを思い出したのか、梓の顔は真っ青だった。
「何の話をした?」
「ちょっとね……」
伊織に聞いたけどはぐらかされて、どうしてこうなったのかは聞けなかった。
仕方ない……梓を優しく抱きしめ、囁く。
「大丈夫、俺の声に集中して……」
さっきまで力が入っていた体がだんだんと抜けてくる。
「そういい子だ……」
伊織が何を聞いたのかわからないが、怖い思いをさせたな……と思いつつ、頭を撫でてやる。
「好き……」
また幻聴が聞こえた気がした。『好き……』って、梓の声が。
今日は俺の願望が叶うなぁ……俺の死が近づいてるのか……?
…んなわけ……え?
気づいたら目の前に梓の顔が見えて。
え……俺、今日どうした……?
そして……
唇に柔らかくて、温かい梓の唇が重なっていた。
あれ……俺、幻覚でも見てる?幻聴だけじゃなくて、幻覚まで見るようになってしまったのか?
でも……ちゃんと梓の体温を、香りを感じる。
あぁ、ヤバい。
このまま押し倒しそう。いいかな……このまま襲っても……
その瞬間、伊織の声がした。そして梓の唇が離れていく。
「あ、あれ……俺、今……何を……」
・・・え?
「うわぁぁぁぁぁ!」
いきなり騒ぎだした梓。本当に忙しいやつだな。
「何を騒いでるんだ。落ち着け」
「な、何で逃げなかったのさ!好きでもない男にキスされるってわかってたのに!」
「頬をお前の手で押さえられてたから」
てか、好きでもない男にキスされそうになったら、ふつう逃げるだろ。気づけよ、この鈍感ヤロウ。
「いやいや、そんな強くなかったから!逃げれたから!」
騒ぎだしたと思ったら、だんだん落ち込む梓。俺はため息をついた。
「たかがキスで何動揺しているんだ、今さらだろ。それにこれが初めてじゃあるまいし。」
「そうなんだけどぉ……」
「何が気になるんだ?何が気に入らないのだ?そんなに俺とのキスがイヤだったのか?」
キスして来たくせに落ち込まれるとこっちが傷つくんだが。
「イヤでは、なかったけど……」
イヤでは……なかった……
「何で?」
「何でって……キスは嫌いじゃないから……?」
キスは嫌いじゃない……
「俺とのキスは好きなのか?」
「ん?……まぁ、そうだけど?」
俺とのキスは好き……ヤバ……嬉しい。
純粋に嬉しい。
さっきまでのモヤモヤが一気に吹き飛んだ。チョロすぎるだろ、たかがこの程度で。
でも俺にとって梓の言葉は誰よりも一番心動かされるものだから、仕方がない。
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