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入口の方を向き、清水さんを残したまま帰ろうとする。
本当は知っている、梓の好きなもの。前にデートしたとき、ものすごく嬉しそうにしていた。
その時の梓の写真。犬と猫、両方楽しめるカフェで撮ったもの。今でも楽しかった思い出として今でも持っている。
スマホの写真ホルダーを開き、その写真を眺める。
「本当はあげたくないけど……」
あげたくない。このときの梓は、この時しか見れないから。
でも……前に進むために……
「これ、いります?」
清水さんの目の前に立ち、梓の写真を見せる。
「え、いいのか?」
驚きながらも嬉しそうな表情。大人っぽい顔が一瞬子供のように見えた。
「タダとは言いません。梓のこと泣かせたら、ぶん殴ります。カッコイイ今の顔をブサイクにしてやります」
半分嘘で、半分本当。ブサイクにしたら梓がかわいそうだ。
『恋人』という形では梓の近くにはいられないけど、『友人』としてなら、今は距離があってもいずれまた梓に会える日が来るから……
「約束する。梓は俺が幸せにする」
「…それじゃあ……」
俺はお店を出た。辺りはもう真っ暗。時間を見ると夜7時過ぎていた。
近くにある公園のベンチに座る。誰もいないし、少し風が吹いて寒い。
「あずさ、元気かな……」
今頃梓は何してるだろう……どうせ、あの人にたくさん愛されてるんだろうなぁ……
あ、でも怒ってるって言ってたなぁ……怒った顔も可愛いんだろうなぁ……
…って違う。また考えてしまった、梓のこと。
『梓は俺が幸せにする』
ふと清水さんが言った言葉を思い出す。もし俺に好きな人ができたら、清水さんみたいな人間になるのだろうか。
こんな俺でも一途になって、この人のためなら……と思える人になれるのだろうか。
夜空を眺めて思うこと。
「腹減った……」
次へと進む決心はできても、腹が減っては戦はできない。行動に移す気力も、体力もお腹が減って今はない。
せっかくいい雰囲気だと思った人もいるかもしれないが、人間だから仕方がない。だから今日は、兄貴の家にでも行ってご飯食べに行こうかな。
そう思った数日後、俺は運命の人に出会う。そしてこの運命が今まで以上に辛い道をたどっていくことを、この時の俺はまだ知らない。
[end]
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