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孤独な1週間(5) *
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陸「…はぁ……はぁ……」
男「ねえ」
大通りを抜け、商店街を横切り、人気のない地下道へ入った時
不意に後ろから声がした
驚いて振り向くと、すぐ側、ほんの30センチメートル程の位置に人が立っていた
薄暗い地下道、逆光で黒く際立つ細身の体
コンビニでこちらの様子を執拗に伺っていた男だとわかる
いつの間に距離を詰められた?
まるで気配を感じなかった
男「Ωだよね」
陸「は…」
男「ダメじゃん発情期に外フラフラしてちゃ」
男はその節の出っ張った木の枝のような手で俺の腕を掴んだ
陸「離せ」
逃げ出す間もなくコンクリートの壁に押さえ付けられる
妙に長い指がしっかりと巻きついて離れない
頬は痩せこけて目は窪み、口元は不気味に緩み口角が上がっている
至近距離で見るその顔はまるで怪物に見えた
男「便利な時代だよね、発情期でも抑制剤飲めば普通に外出できちゃうんだから」
陸「何を…」
男「けど君は分かってない」
男は俺の股の間に脚を押し込み、ぐり、と俺の性器を押し上げた
陸「う、ぁ」
急な刺激に全身が反応する
ピリッと電流が流れたように強ばる手足
コンビニのビニール袋が手から滑り落ちた
男「αだけに気を張っていればいい?それは違うね」
陸「ぁ、ッ」
男「オジサンみたいに、Ωの匂いがわかっちゃうβもいるんだよ」
男はぐりぐりと性器への刺激を繰り返す
男「知ってるよ、発情期のΩは性感帯を刺激してる間動けなくなる」
慣れた手つき
この男、常習犯らしい
Ωを標的にした強姦魔といったところか
陸「ン、ぁ…止め、止めろッ」
男の薄く開いた口元が不気味に笑う
細長い指がスルスルと服の中に侵入し、滑るように腹に触れる
横腹をいやらしい手つきで撫で回され、ゾワゾワと嫌な寒気がした
男「何か運動とかしてるの?いい筋肉だね」
腹に指を這わせつつ再び性器を強く押され、俺はとうとう脚に力が入らなくなってしまった
陸「は、ぁ…は、ン」
壁にもたれかかってズルズルと座り込む
心臓がドクドクと鳴って、呼吸が苦しい
全身の力が抜け、底知れぬ脱力感が全身を支配した
男「あーあ、弱いね。こういうの慣れてないの?」
陸「はぁッはぁ…ぅ、は…クソ……クソ…ふざけ…」
しゃがんで俺の顔を覗き込む男を渾身の力を込めて睨みつける
男「そんな怖い顔しないで、気持ちよくするからさあ」
陸「ひ、ッ何す……あ゛、っ?」
男は俺の股間に手を伸ばすと、下着の中に手を入れ、躊躇なく穴に指を突き立てた
自分でも決して触れることはしなかった場所
Ωの、もうひとつの性器
陸「あ、ま、嫌だ…よせ、っ抜け!」
両手で男の腕を掴み押し返そうともがくが、上手く力が入らない
細長い指が中をゆるゆると動く
男「へえ、ちゃんと濡れてるじゃん」
陸「うるせ、あッぅ、あぁ、クソ、死ねっ!死ね…っし…んッぁ…」
初めての感覚に体が震える
Ωの身体である以上は仕方がない事だが、それでも敏感に反応する体が自分でも怖くなった
陸「ん、はぁ…ン、ン」
ああ、俺はこんな奴にヤられるのか
絶望感、喪失感、敗北感
様々な感情が一気に押し寄せて、胸を押し潰そうとする
俺には重すぎる
耐えられない
ゴッ
男「ぅ゛」
視界から男が消えた
働かない頭で必死に理解しようと考える
直後、目の前を横切った何かを目で追った
少し離れた場所に倒れた男の胸ぐらを掴み上げて何かを言っている
見覚えのある広い背中
手荒く放り投げた男が逃げ去るのをじっと見届けたかと思うと、くるりとこちらを振り返り俺の目の前にしゃがみ込んだ
「痛いとこ無いですか」
目頭が熱かった
そいつを視界に入れたまま、歪んで何も見えなくなった
頬が温かかった
そいつは何も言わず、俺の服を整えた
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