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孤独な1週間(6)
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恭二郎「立てますか?」
陸「…無理」
俺の両脚は時折ふるふると震えてまるで使い物にならなかった
こんな醜態を通りすがりの後輩に見られるとは
惨めな涙を隠すように下を向き、濡れた目元を服の袖でごしごしと拭いた
恭二郎「…」
虎岩は無言のまま立ち上がると、何を思ったか俺の隣へ壁を背にドスンと腰を下ろした
陸「…」
恭二郎「…」
陸「…何」
恭二郎「外、雨なんで」
虎岩の言葉で、雨が降り始めた事に気づく
薄暗い地下道にしとしと響く雨の音
陸「…何で来た?」
ふと、問いかけた
恭二郎「…あの後店を出て、一旦帰ろうとしたんです。けど先輩、発情期だったから何となく気になって」
戻って匂いを追ってみたら、そう言う虎岩の呆れ顔
陸「俺が発情期だって、いつ…」
恭二郎「そんなのすぐ分かります」
心臓の音がやけにうるさく思えた
何だか、虎岩の側に居ると胸が苦しい
下腹に熱が集中する
ああそうか、αのフェロモンで発情が誘発されているのか
体育座り、俯いたままちらりと虎岩の方を見た
陸「……なぁ、どっか行ってくんね」
荒くなる呼吸を抑え、落ち着いた声を繕った
虎岩は静かに腰を下ろしたまま動じない
陸「助けてくれたのは…感謝してる」
恭二郎「…」
陸「けど、その…あのな…………」
火照った体に、雨で冷やされた空気が冷たかった
濡れたアスファルトと土
そして、αの匂い
陸「お前がそこに居ると俺、何か、おかしくなりそうなんだよ」
恭二郎「え」
陸「お前、α!だから…」
虎岩が若干動揺するのが横目で見てとれた
あなたの匂いで発情してます、こんな意味合いの言葉をどうして俺が年下の大男に申告しなければいけないのか
何だか惨めで腹が立った
恭二郎「………………すいません…」
虎岩はおもむろに立ち上がると俺から少し離れる
が、少しの間立ち止まった後思いついたようにすぐにこちらへ戻ってきて俺の腕を掴んだ
陸「はっ?」
恭二郎「家どこですか?送ります」
陸「い、いいって…ぁ」
腕を引かれ、立ち上がった先
虎岩の腕の中
ふわりと鼻腔に充満するαの匂い
陸「ッ、っは…ぁッ」
匂いだけで、全身にぞくぞくと快感が走る
全身の力が抜ける
膝から崩れ落ちそうな俺を虎岩の太い腕が受け止めた
恭二郎「す、すいません」
陸「ッ馬、鹿…」
恭二郎「先輩一人にして離れるの、やっぱ危ないんで」
虎岩はよいしょと俺を抱えあげると、出口に向かって地下道を歩き始めた
陸「な、下ろせ!ちょッ、っ」
恭二郎「暴れないで下さい」
子供にするように肩に担ぐ格好が恥ずかしくて堪らなかった
陸「こ、この格好、嫌だ…」
虎岩は少し考え込むように立ち止まった後、ストンと俺を下ろして目の前にしゃがみ込んだ
大男の奇行に思わず目を細める
陸「……何?」
恭二郎「背中貸すんで、どうぞ」
陸「は?」
恭二郎「おぶります」
じっと待つ背中を見下ろす
こいつは本当にαか?
こいつは俺のフェロモンを何とも思っていないのか
そんな事が有り得るか?
俺の知っているαと違う
ドクドクと鳴る心臓
頭の芯まで煮えるように熱い
その広い背中に俺はおずおずと腕を伸ばした
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