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孤独な青 3
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父親譲りの黒髪に深い青の瞳と、母親そっくりの顔をした僕は、確かに青蓮家の血を受け継いでいる。なのに、変身出来ないのだ。
母親は、落ち込む小さな僕を抱きしめて、「焦らなくていいのよ。あなたは、確かに青蓮の血筋なのだから。そのうち、とても綺麗な狼に変身出来るわ…」と、慰めてくれた。父親も、母親の隣で頷いていたが、その目には苛立ちが浮かんでいるように見えた。
そんな優しい母親がいなくなり、義母が来て弟が生まれ、その弟が三歳で美しい毛並みの狼に変身した。
父親は大喜びで、弟の変身を祝って宴を開いた。僕も仕方なく参加した席で、浴びせられた父親の僕を蔑む冷たい目は、ずっと忘れることはない。父親だけでなく、宴に出席していた青蓮家に繋がる全ての人々が、僕を異端な者として、軽蔑の眼差しを向けてきた。
僕は素知らぬ振りで耐えていたけど、まだ九歳の子供では、重苦しい重圧に耐えきれずに押し潰されてしまいそうだった。
だんだんと顔が青ざめ、手足の先が冷えて震え出した頃、ロウが僕を部屋から連れ出した。
ロウの部屋へ連れて来られ、温かい紅茶を出されて一口飲んだ瞬間、僕は堰を切ったように泣き出した。
僕にも青蓮家の男としてプライドがある。だから、どんなに冷たく当たられて酷いことを言われても、決して泣いたりなどしない。でも、ロウの前ではダメなんだ。我慢出来ずにいつも弱音を吐いてしまう。
だからと言って、ロウは僕を見下したりしない。いつも僕を主人として、敬う態度を崩さない。
ロウは、僕をそっと抱きしめて、黙って何度も背中を撫でた。
思いっきり泣いて落ち着いた僕は、ヒクヒクとしゃくり上げながら話し出す。
「ロウ…、なんで僕は変身出来ないんだろう。変身の仕方は理解しているし、どこをどうやればいいかもわかってる。でも、何度やっても出来ないんだ…。やっぱり僕は、出来損ないなんだ。青蓮家の恥なんだ…っ」
「ルカ様、あなたは、俺が青蓮家の中で、唯一お仕えしたいと望んだ方です。俺は、ルカ様が出来損ないとは思えません。青蓮家の誰よりも美しく聡明だ。人狼界の中で、ルカ様だけが変身出来ないというのも、神様に選ばれた特別な存在に思えてなりません」
ロウの力強い言葉に、僕はゆっくり顔を上げる。深い海を思わせるロウの瞳に、情けない顔の僕が映っていた。
その目を細めて、ロウが僕の額にキスをする。
「ルカ様、他の誰が何と言おうとも、俺はルカ様から離れません。俺の主人はルカ様だけです。どうか、俺の大事なあなたを、貶めるような言葉を口にしないで下さい。ほら、あなたのそんな可愛らしい泣き顔を見てると、堪らなくなる。落ち着いたのなら、俺と散歩に行きませんか?背中に乗せて、どこまでも駆けて行きますよ」
十六歳になって、急に大人びた顔つきになったロウに、ドキリとした。
僕は変身したロウの、月明かりに煌めく鉄色の毛並みが好きだ。触れると意外に柔らかくて心地いい。その背中に乗るのも好きなんだ。
僕は、ロウの服に顔を擦りつけて涙を拭くと、大きく頷いた。
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