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黒い影 4
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ロウに抱きしめられてから、一時間は経っただろうか…。
僕は顔を上げて、「…もう大丈夫…」と呟いた。
「本当に?俺は、いつまででも抱きしめてあげますよ」
「うん…。でも、もういいから…」
「そうですか…」
ロウが、僕から離れてベッドを降りた。僕も、ロウに続いて降りて、着替えようとクローゼットの前に立つ。クローゼットを開けた僕の背中から、フワリとロウの腕が僕を包んだ。
僕は、小さく息を吐くと共に、言葉を吐き出した。
「もういいと言ったのに…」
「まだ…辛そうだ」
クローゼットの扉を掴んでいた手をゆっくりと下ろして、ポツリと言う。
「今日…父さんがこの家に来た…。僕がちょうど家に着いた時に、会ったんだ。ロウを…訪ねて来たみたい。相変わらず、僕なんて見えてなかったよ…」
ジワリと視界が滲んできて、慌てて目を瞬かせる。それでも少しだけ、鼻をズズ…と鳴らしてしまった。
僕の身体に回した腕に力を込めて、ロウが耳の傍で囁く。
「ルカ様…、ルカ様の傍には俺がいる。俺だけでは、ダメですか…」
「ロウ…、父さんに…戻って来いって命令されたら、僕を置いて…戻って、いいよ…」
ロウが、いきなり僕の身体を反転させて、強く肩を掴んだ。僕の顔を覗き込むロウの目に、思わず肩がビクリと跳ねる。ロウは、とても怖い顔で僕を睨むと、強く抱きしめてきた。
「あなたはっ…!何度言えばわかるのですっ!俺はっ、傍を離れないと言ってるっ。だから、あなたも離れるなと…。俺の、あなたへの想いを見くびるなっ」
「…ロウ、苦しいよ…」
骨が軋むくらいに強く抱きしめるから、圧迫されて息が苦しい。ロウの胸に抱き込まれて顔が見えないのをいいことに、僕は静かに涙を流してロウのシャツに染みを作る。
ーーロウ…僕を一人にしないで。僕は、父さんが僕を見ないことよりも、ロウが離れて行くことの方が怖いんだ。
僕は、ダラリと横に垂らしていた手をロウの背中に回すと、より一層密着するようにしがみついて、ロウのシャツを強く握りしめた。
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