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第五話 母のはなし
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「ジジジジジ」
飾りっ気のない目覚まし時計で、俺は今日も朝7時に目を覚ます。
しかし、今日はいつもと違う日だった。
俺は起き上がると、すぐに正座をし、姿勢を正した。
俺は合掌をして、静かに目を閉じる。
今日は、母の8年目の命日だ。
俺の親は、父はβ、母はΩだった。珍しい家庭だったと思う。
父と母は大学の同級生で、当時、父がΩの母を周りの偏見や中傷から守っていたのだという。
そんな二人は結婚して俺が生まれた。
幼いころは、よく3人で出かけていた。特に、小さいころにはΩとかβとか分からなかったし、他の家族と何ら変わらずに幸せだったと思う。
しかし、俺が小学生に上がった頃、母の体に変化が起こっていった。
初めは仕事中に貧血を起こす程度だったが、次第に日常生活にも支障をきたし、俺が5年生になる頃には、一人で歩くこともできなくないほど弱っていた。
その原因は、母が番を作らなかったことにある。
基本的に、Ωは番を作ることによってホルモンを安定させることができる。逆を言えば、番を作らなければホルモンの乱れがおき、生活に支障がでる。母の場合は、俺を生んだということもあり、他のΩに比べてホルモンの乱れは大きかった。
しかし、父のことを愛し、俺を悲しませないためにも、母はαと番にはならなかった。
そして、母は俺が中学1年の夏に息を引き取った。
俺は、決してΩに対して偏見は持たないと思っていた。
でも、母の衰弱しきった体をみて、Ωを「弱きもの」だと思ってしまった。
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